準備の初期段階にやるべきことと直前でもできることは異なる。万全の体制で当日を迎えるためのコツを、厳しいスケジュールの中で成果を出してきた2達人が伝授する。

岩瀬さんの場合

ライフネット生命副社長 
岩瀬大輔氏

本番の3日前、少なくとも1日前の段階では、プレゼンやプロジェクトの大体の骨格はできあがっていて、残るは細かい詰めの作業という状態になっているのが理想的でしょう。また、この段階では100%に仕上げようとするより、80%ほどの状態で切り上げて練習に時間を割いたほうがいいと思います。

大学時代、私は司法試験の予備校で講師のアルバイトをしていました。一度、400人くらいの生徒を対象にした講義を行ったことがあるのですが、そのときは友人10人くらいに集まってもらって事前に模擬授業をやりました。リハーサルをしてみると、時間の使い方や自分がつっかえやすい個所がよくわかる。相手の反応するポイントも事前にチェックできて、不必要な緊張はしなくなります。

重要なプレゼンに臨むときも、事前に社内でリハーサルする。私自身、社外の人に向けて話をする前には、社長の出口(治明)やほかの役員に聞いてもらうことがよくあります。それだけでなく、社内でそれぞれ専門性を持った人、たとえば医療関係の話なら看護師資格を持っている社員、保険の数学的問題なら保険数理の専門家に相談をするようにしています。どこかに抜けている視点がないかをチェックしてもらうためです。

本番の1日前なら、新しい視点を盛り込むより、表現や言い回しを一工夫するほうが効果的かもしれません。前述のテレビ出演の際には、出演前夜に厚生労働省の友人とメールでやり取りをすることで「世代間の対立を煽るような言い方は避ける」「60歳以上を“高齢者”と一括りにせず、シニア世代、つまり自分の母親の世代。シルバー世代、こちらは祖母の世代、と実例を出しながら、丁寧に論じる」といったアドバイスをもらうことができ、ずいぶん助かりました。