優秀な人材の獲得と並んで注力しているのがグローバル規模の人材教育システムだ。サムスンやLGEなどの大手の入社後の研修は約1カ月。まず本社で企業の価値観や歴史、事業戦略をはじめ問題解決能力などの基本的スキルを2週間程度かけて学び、残りの期間は配属先のグループ企業で研修を行う。じつはここまでは日本企業がやっていることと同じだ。異なるのは海外拠点で採用した外国人の教育システムだ。

李尚燮(リー・サムスム)●6年以上にわたりLGエレクトロニクスのグローバル人事でシニアマネジャーとしてグローバル人事の戦略立案、採用、育成を担当。2009年以降は、大学で教鞭を執る傍ら、LG、ヒュンダイ、POSCOなどでコンサルタント業務を行う。(American Managemet Association=写真提供)

LGEは世界各地にグローバルラーニングセンターを設置している。中国、アフリカ、ヨーロッパ、南米など世界の6カ所にあり、ここで共通の研修を受けている。ただし、北米には各種の学習機関が整備されており、あえて設置していない。

さらに新卒を含めジェネラルマネジャー(GM)や現地の幹部クラスの中から重要な人材であるキータレントを400人選抜し、韓国での研修を行っている。

「韓国以外の海外の子会社で採用したキータレントは韓国に来てもらい1週間の研修を受けてもらう。400人中には新卒もいればエグゼクティブクラスで採用した人もおり、彼らは国内の採用者と同様の教育を受けています」(李尚燮教授)

社員教育は階層ごとに教育プログラムを用意している。LGEの職務等級はマネジャー以下のG(グレード)1、マネジャー候補のG2、マネジャークラスのG3、GMクラスのG4、そして役員クラスのEVP(エグゼクティブ・バイスプレジデント)の5つに分かれる。

マネジャー以下の社員の教育で重視しているのは問題解決能力や大規模な業務変革など新しい変化に対応できるチェンジマネジメントだ。具体的なケーススタディに基づいた実践的な教育である。さらに社員一人ひとりにコーチングのプログラムも提供される。

また、シニアマネジャーレベルになると、マーケティング戦略や財務・会計、サプライチェーンマネジメントなどMBAの内容を重視したプログラム編成になっている。研修も集合研修だけではなく、オンラインによる学習も実施している。G4のGMクラスは海外拠点のCEO候補になり、事業戦略やマーケティングなどの実践的なビジネストレーニングを受講しなければならない。同様にEVPにもコーチングによるグローバルリーダーシップ研修が課されている。