ホテル、運輸、外食、自動車など、多くの業界で企業の赤字決算が報告されている。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「どの企業も青息吐息で年間倒産件数は1万件を超えるおそれがある。政治家は自粛を指示するだけでなく、経済再開の基準も一緒に示すべきだ」という——。
コロナウイルスの経済的影響
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目も当てられない……コロナ禍で落ち込む日本経済、企業業績

新型コロナウイルスが日本経済に与える影響が深刻化しています。ホテル、運輸、外食、自動車産業をはじめ、多くの業種に影響を及ぼしています。

東京商工リサーチによると、5月8日までで、コロナ関連の倒産は128件。そのうち、宿泊業が29件で最多です。一部の食品メーカーのように業績が以前より良いところもありますが、多くは業績の低下に直面しています。

SMBC日興証券が「3月期決算」の企業の一部(199社)を調査したところ、2020年1~3月期の純利益は前年同期比67.3%減(非製造業、76.7%減、製造業59.3%減)とのことです。

図表1は、運輸業界の状況です。JAL、ANA、JR東日本、JR東海、JR西日本の各社の2019年3月期と2020年3月期の営業利益を比較しています。

運輸業界の状況

JR各社、JAL、ANA、運輸業界も赤字決算

各社とも営業利益が悪化していますが、ほとんどが第4四半期(今年1~3月)の影響です。たとえば、JR東日本は、2019年1~3月期は443億円の黒字でしたが、2020年の同期では、463億円の赤字で、差額は900億円を超えています。

この図表1から、いくつかのことが読み取れます。

ひとつは、各社ともに業績を悪化させている中、減益率を見ると、JR各社よりも航空業界のほうが影響は大きいということです。とくにANAの落ち込みが大きいことが分かります。

こういう時に、企業存続のために必要なことは、資金繰りの確保ですが、ANA、JALともに、当面の資金は確保しています。たとえば、ANAは9500億円規模の資金調達計画を持っています。また、JAL、ANAともに、人件費をはじめとして、1000億円単位での経費削減や、配当を抑えることにより、資金流出を防ごうとしています。

比較的規模の大きな上場企業に関しては、銀行などが資金繰りの手助けをすると考えられますが、業績は厳しくならざるを得ません。