前の会社を「辞職した」ことになっていますが、本当のところは解雇でした。就職面接で「なぜ前の会社を辞めたのですか」と聞かれたら、何と答えればよいのでしょう。匿名希望(ミズーリ州)


 

職場では歩み寄りが不可能な意見の相違が頻繁に起こりますが、ほとんどの人は自分にはそんなことは一度も起きなかったかのように行動します。次の仕事を探すときも、「なぜ辞めたのか」という当然の質問に対して、「私には合わなかった」とか、「新しい挑戦がしたい」とかいったきれいごとを並べがちです。

そのような「言い訳」が、当人にとって真実の要素を含んでいることもあります。上司や会社が耐えがたいので、とにかく脱出したいという場合もありますし、与えられた仕事がつまらないものであるとか、自分のスキルとマッチしていないという場合もあります。それに、誰だって自分をのっぴきならない状況に追い込みたくはありませんから、退職理由についてある程度曖昧にすることは唯一の方法のように思えるかもしれません。

しかし、採用する側の企業は、何の変哲もない退職物語の中から真実を嗅ぎ分けるものです。この求職者は協調性に欠けるとか、慢性的にパフォーマンスが低いとか、転職を繰り返すタイプだといった情報を汲み取るのです。

ですから、私はあなたの問いに対しては、100%主体的に対応することをお勧めします。

 「私が退職した理由はこうであり、それについて私にはこのような責任があります」と説明してください。責任を転嫁してはなりません。また、それに劣らず重要なこととして、被害者面をするのは禁物です。「私はこの経験からこのようなことを学びました。ですから、御社に採用されたあかつきには、前の会社のときより優れた社員になれるはずです」と、宣言してください。

退職のいきさつをなにもかも事細かに話せと言っているのではありません。普通ならまずやらないほど具体的に説明するよう勧めているだけです。

私の友人に、12年間勤めた会社を退職するよう求められた人がいます。成果をあげていない部下を放置し、コスト削減を達成できなかったからです。

彼のような立場に置かれたら、たいていの人が意気消沈し、保身に走ります。そして自信喪失の悪循環、いわゆる「敗北のスパイラル」に入ってしまいます。しかし、この友人は、しっかりと説明責任をはたしました。彼は採用面接の場でこう言い切りました。

 「私がこの場にいるのは、目標を達成できなかった部下を追い出す勇気がなかったためであり、必要な措置を取るのを怠ってコスト増を招いたためです。はっきりお約束しますが、そのような誤りは二度と犯しません。それを実証するチャンスを与えてください」

数週間もしないうちに、彼に次のチャンスが訪れました。

あなたが100%主体的に対応すれば、同じようなチャンスが訪れるでしょう。もちろん、「過去」は消えてなくなりはしません。解雇された人を採用するのは企業にとっては冒険です。しかし、あなたの率直さと自覚がそれを埋め合わせてくれるでしょう。

(回答者ジャック&スージー・ウェルチ 翻訳=ディプロマット (c)2007. Jack and Suzy Welch. Distributed by New York Times Syndicate.)