低い診療報酬の中で懸命に治療に当たっているのに、患者さんからは「AEDはあるか」「滅菌処理しているか」、疑い深い眼差しでねちねちと質問される。そんな苦しい状況を実力派歯科医たちが語り合った。

自費治療を勧めるとぼったくり扱い

時としてバッシングの対象となる歯科医。ベテラン実力派歯科医たち3人が胸の内を語り尽くした。

●開業医10年目
田舎では、自費治療を勧めようものなら村八分にされかねない
●開業医16年目
歯科医院の中に心電図モニターがないと問題だ、という指摘は的外れ
●開業医21年目
最新の設備がある歯科医院だけを「合格」として、その他を貶めるのは違和感がある
●開業医16年目
個室で治療しなくてはダメだ、という批判もあるが、国の衛生基準に従っている

【歯科医A】週刊誌は特にそうなのですが、歯医者へのバッシングが激しいですね。歯医者=没落、貧乏、銭ゲバみたいなイメージをこれでもかっていうぐらいに強調されてしまう。

【歯科医B】患者さんにとっても不幸なことだと思うのです。国は最低限のことだけを公的負担にしているわけで、ベストな治療は保険診療の中では難しいということがあまり知られていない。それで、特に地方の田舎だと「自費治療=ぼったくり」のようなイメージがついて回って、私たち歯医者のほうからそれを勧めようものなら、村八分にされかねない。口腔内のケアは、寿命にも大きな影響を与える大事なことですから、多少お金をかけてもきちんとした治療を受けたほうがいいと思うんですが……。

【歯科医C】歯医者バッシングの最たる例は、「コンビニより多い」からはじまるこき下ろしですね。コンビニより多いのは確かですし、歯医者の数は、国の政策の結果多くなってしまいましたが、国家試験の合格率は65%程度。医師の90%と比較して非常に狭き門といえます。母数が違いますから、医師と単純な比較はできませんが、コンビニより多いからといって、頭が悪いとか、質が低いとか、銭ゲバとかいうのはおかしい。

歯医者への批判は、的外ればかり

【歯科医A】1人のバカな歯医者のやった、せこいカネ稼ぎを、あたかも歯医者全体でやっているかのような印象は本当に迷惑ですよね。最近、歯科医院の中にAEDや心電図モニターがないと大変だと指摘する人もいる。そもそも、通常の歯科医療で患者の生死に関わるものというと、アナフィラキシーショックへの対応です。心肺蘇生にAEDは必要と思いますが、心電図モニターが絶対に必要かと言われるとそうではないと思いますね。

【歯科医B】基本は、気道の確保ですよね。それから、緊急事態が起きないような体調のチェックやかかりつけ医との連携といった予防が大切。AEDについては今では多くの歯科医院で配備されていますよ。