人間の能力を測る方法にはいくつかある。代表的なものとしてすぐに浮かぶのは、「知能指数」だろう。

社会とつながり、自分という資源を何に使うかの工夫が大切だ。(PIXTA=写真)

「知能指数」を計算するためには、まず、標準的なテストを受ける。そして、その結果を他の人と比較して、計算式に従って算出する。

ここで求められているのは、とにかく、決められた時間の中で、できるだけ多くの問題を正確に解くという「処理能力」である。どれくらい集中できるか。問題解決という目標に向かって、脳の計算資源をどれくらい総動員できるかが求められている。

ところが、私たちの実際の仕事や生活の場における能力発揮のあり方は、このような「テスト」で求められる能力とは随分違っている。

1つには、「人格」ということがある。人格の評価の仕方にはいろいろあるが、1つのやり方は、本人が時間や集中力などの資源を、どのように配分するのか、その傾向で評価することである。

世の中には、もともとのポテンシャルは高いのに、なぜかサボってしまっている人がいる。あまり仕事ばかりに熱中しないで、プライベートを充実させたり、趣味に走っている人がいる。一方で、自分の能力を目いっぱい使って仕事をしている人もいる。プライベートは犠牲にして、とにかく仕事に尽くす。友だち付き合いもあまりしない。そんなタイプの人もいる。

一見サボりタイプの人と、仕事熱中タイプの人を部屋に閉じ込めて、「よーいドン」でテストをしたら、ひょっとしたらサボりタイプの人のほうが高い成績を収めるかもしれない。

しかし、私たちの生活は複雑で、毎日テストをしているわけではない。さまざまな方程式の中で、それぞれの人が人生を探っている。