「夫が亡くなると私の年金はどうなるのでしょうか」。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏は、60代以上の女性からこうした相談を受けることが増えているという。井戸氏によると、夫が亡くなった多くの世帯では、年金収入が半分から6割程度に減ってしまう。収入減の影響は深刻だ。今からできる「3つの対策」を教えよう――。

※本稿は、井戸美枝『届け出だけでもらえるお金 大図解』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

夫と死別「おひとりさま」の懐具合は夫次第

夫が亡くなり、高齢の女性が1人で暮らす。いわゆる夫と死別した「おひとりさま」が、今後増えることが見込まれています。日本人の平均寿命は、女性が87.26歳で、男性が81.09歳(2017年厚生労働省発表)。男性に比べて、女性のほうが長寿であり、女性は人生の最後を1人で迎える可能性が高いです。

「おひとりさま」への公的な保障には、遺族年金があります。しかし、働き方や収入によっては受け取れない可能性もあります。

「夫が亡くなると私の年金はどうなるのでしょうか」

筆者はファイナンシャルプランナーとして、お金に関する相談を受けていますが、最近増えているのが「夫が亡くなると私の年金はどうなるのでしょうか」という内容です。相談者の一番大きな心配は、亡くなった夫の分がすべてなくなるのではないか、というものですが、そうなるとは限りません。「遺族年金」を受け取れる可能性があるからです。

本稿では、「共働きの世帯」「夫が会社員、妻が専業主婦の世帯」「夫がフリーランスの世帯」の3つの世帯ごとに、夫が先に亡くなるケースをみていきます。

【ケース1:夫・妻ともに会社員の場合】

まずは、夫婦ともに会社員として働いていたケースです。共働きの世帯は増えており、今後こうした世帯はさらに増えるでしょう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/bee32)

2人とも会社員だった場合、夫が先に他界すると、支給されるのは、残された妻自身の「老齢厚生年金」か、亡くなった夫の「遺族厚生年金」のどちらか金額が多いほうになります。

「遺族厚生年金」は、亡くなった人の老齢厚生年金の75%。つまり、夫の老齢厚生年金の75%分の金額が、残された人(この場合、妻)の老齢厚生年金を上回った場合に、その差額が支払われる仕組みです。(※1)

妻よりも亡くなった夫の平均年収が高ければ、遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。反対に、夫より妻の年収が高かった場合は、支給されないこともあります。

なお受け取り時(夫が亡くなった時)の妻の年収が850万円(所得金額で655万5000円)以上の場合には、じゅうぶんに生計が維持できるとして、遺族厚生年金は支給されません。

その他、夫の老齢基礎年金、企業年金(※2)などはなくなります。iDeCoなど確定拠出年金で運用している資産があれば、「死亡一時金」として遺族に支払われます。

※1:1942年4月1日以前に生まれた人は「残された人自身の老齢厚生年金」「遺族厚生年金」「遺族厚生年金の75%+老齢厚生年金50%」の中から、もっとも多い金額になります。
※2:企業年金の要件を満たせば、死亡一時金が支給される場合があります。

これらのことから共働きだった夫婦は、どちらかが先に逝ってしまった時、支給される年金は世帯全体で見ると最大半分程度になることが多いでしょう。