職安が「会社都合による退職」と認める基準とは

AIの発展が進むなかで、高給取りの銀行員が大量にリストラされれば、雇用保険財政が破綻するのではないかと不安を持つ方も多いだろう。

だが、当面破綻の心配はないだろう。雇用保険は空前の財政黒字なのだ。1度は破綻寸前まで陥った雇用保険財政も2003年以降、度重なる給付抑制によって収支状況は劇的に改善。積立金は4兆円を超えていたが、07年には受給に必要な加入期間を6カ月から12カ月(自己都合退職)と倍増させて実質給付抑制を図った。結果、受給者数は減少し、15年には積立金が6兆4000億円を超えた。

知識のあるなしで、もらえる金額に大差が出る。例えば、19年3カ月勤めた会社を自己都合退職、失業手当をもらわず3週間で再就職したものの勤続5カ月で退職した45歳のAさん(在職時月給45万円)の場合、給付日額は7500円。現状では所定給付日数が120日のため、失業手当は90万円。だが、被保険者期間が20年になるまで働くと所定給付日数が150日に。退職理由を会社都合にできれば、330日まで延びる。

また、所定給付日数の3分の1以上を残して再就職すれば、再就職手当も受け取れる。就職のお祝い金として50万円もの現金が一時金で支給されるのだが、支給要件を満たしていないと1円ももらえない。Aさんの場合、受け取り方によって157万5000円もの差が出るのだ。

とはいえ、退職理由を会社都合にするのは難しいと考える人は多いだろう。その場合は、この手がある。

公共職業安定所(職安)に特定受給資格者(会社都合による退職者)と認められる基準のなかに、「離職前3カ月に時間外労働が月45時間を超えたために離職した」という規定がある。そこで、在職中に残業の記録をつけておき、退職後に「これだけの残業を強いられたために退職した」と職安に申し立てるという作戦だ。それだけの残業をしないとこなせない業務量だったと証明する詳細な業務日誌も一緒に提出するのがコツだ。最終的に職安が特定受給資格者と認めてくれるとは限らないが、実践してみる価値は十分にあるだろう。

日向咲嗣(ひゅうが・さくじ)
新聞社、編集プロダクションを経て、フリーランスライターに。サラリーマンの副業ノウハウ、失業・転職など職業生活全般をテーマにした執筆活動を展開中。『58歳からのハローワーク200%活用術』など著書多数。
(構成=大山弘子)
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