自分が部下だったときを思い出せ

指示を出しても部下が言うことを聞かないと嘆く上司は多い。このような場合、原因は二つ考えられる。

一つはこちらの指示の出し方が下手なことだ。大量の仕事を抱えた部下に急ぎの仕事を命じたり、優先順位をあいまいにしたまま複数の仕事を頼んだりすると、部下はたとえ指示に従いたくても従うことができなくなる。だがこの場合は、上司としてのスキルを磨くことで解決できる。部下の現在の状況を把握するように努めたり、仕事の背景や重要度をていねいに説明したりすればいい。

問題はもう一つの原因の場合だ。すなわち部下との信頼関係が築けていない場合である。こうなると人間性の問題であり、小手先の技術でどうにかなることではない。人格を改造するくらいのつもりで、根本から自分を変えることだ。

まずは「部下は上司の命令を聞くのが当然」という思い込みを捨てること。自分が部下だったときを思い出してみるといい。上司の権力だけで部下が動くというのは完全な間違い。互いの信頼関係がない限り、部下は動かない。組織運営というのは全人格の勝負なのだ。

私はいつも、部下は家族に近い関係だと思っている。親は子供がどんな子であっても、無条件の愛情を注ぐ。それと同じような気持ちで部下に接することだ。そうすれば、こちらに少々欠陥があっても、部下は信頼してくれる。部下も子供と同じで、いろいろなタイプがいる。何も言わなくてもどんどん仕事をする人もいれば、性格的にひねくれた人もいる。どうしてもウマが合わないタイプもいるだろう。だがどんな部下でも、一人ひとりが貴重な戦力である。それに優秀な部下はあまり成長の余地がないが、出来の悪い部下はまだ3~4割は伸びる余地がある。ということは、このグループの面倒を重点的にみることで、チーム全体の業績を大きく伸ばせるということだ。