いまやツイッターのフォロワー数29万人。世界陸上のメダリストで、ベストセラー『諦める力』の著者、為末大さんが、世界の問題から身近な問題まで、「納得できない!」「許せない!」「諦められない!」問題に答えます。(お悩みの募集は締め切りました)。
お悩みファイル7■独身40代女性。結婚して親孝行したい!
気がついたら40代になりました。意図しているわけでなく、まだ独身です。親孝行の意味も含めて結婚をしたいと思い始めています。私のような未婚者が増えている現状についてどう思われますか?(女性・会社員・40歳)

40代で未婚であっても、本人さえ納得していればよいのではないでしょうか。結婚しない人が増えているといいますが、極端なことを言うと、相手さえ選ばなければ結婚すること自体はそんなに難しいことではないと思います。

ただ、出会いの場が少ないという話はよく聞きます。日本の「はしたない文化」のせいもあるかもしれませんね。最近は「婚活」という言葉も出てきて、若い人はおおっぴらに結婚相手を探す活動にさほど抵抗がないのかもしれませんが、ある年齢を超えると急に「なんだか、そういうことってはしたないんじゃないの?」という空気になる。ゆるやかな出会いの場というのは年を経るにしたがって少なくなってゆき、真面目に結婚相手を探すなら紹介所や婚活パーティーなど、目的を明確にした専門のコミュニティに行くという流れになっていきます。

結婚していなくてもこの方のように「いい人がいればしてもいい」という人が多いと思うのですが、そういう「ぼんやり結婚を意識している」人にはこの手のコミュニティは敷居が高いかもしれません。もっとゆるい「出会いの場」があればよいですね。

相談者の方は「親孝行の意味を込めて結婚したい」とのことですが、親、もっといえば家のために結婚するという価値観は薄まってきていますよね。国際結婚や非婚という選択肢も増えて、同性婚も市民権を得つつあります。つまり生き方のダイバーシティ(多様性)が認められるようになってきた。ただ最近は、少子化の煽りを受けてか、急に社会全体に「産めよ増やせよ」という空気が流れて、未婚者への風当たりが一強くなってきました。この風向きの急激な変化に戸惑っている人は多いかもしれません。

「生き方のダイバーシティを認めましょう」という世の中の流れがある一方で、「この国の少子化は非婚晩婚が諸悪の根源だ」という論調があります。個性を尊重しようとか、多様性が大事だといっていても、少子化の議論になると、「全体のための個人」という発想になりがちです。

このようにみてくると、結婚観をはじめとする社会通念はとは絶対的なものではなく、時代によって移り変わるものだということがわかります。当面、結婚するのがマジョリティであるということは変わらないと思うので、一定年齢以上で未婚だと肩身が狭いということはあるかもしれませんが、本人が納得していれば、親や世間体のために無理をして結婚することもないのではないでしょうか。時代によって変わっていく社会通念に生き方を合わせていくことを窮屈に感じている人も少なからずいると思います。

為末 大(ためすえ・だい)
1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2014年10月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2003年、プロに転向。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリート・ソサエティ(2010年設立)、為末大学(2012年開講)、Xiborg(2014年設立)などを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。
http://tamesue.jp
(撮影=鈴木愛子)
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