小室 今、多くの企業で団塊世代が毎年ごっそり退職していって、その分の仕事が中堅層にのしかかっています。大企業になると、毎年3000人くらいの退職者がいて、新規採用は100人くらい。単純計算で毎年2900人分の仕事が積み上がっていく構造です。

<div><strong>小室淑恵</strong>(ワークライフバランス代表取締役社長)</div>
小室淑恵(ワークライフバランス代表取締役社長)

曽山 想像できない厳しさですよね。

小室 だから中堅社員としては、もうわけのわからないまま、毎日、仕事をしているといった感じだと思うのです。必死で仕事を渡そうとして、数少ない新人に一生懸命に教える。でも、仕事を渡し切る3年目あたりで、多くの新人が辞めてしまうので、教えた仕事が全部戻ってきてしまうのです。

そこに毎年、退職者の分だけ上からも仕事がくる。もう仕事も気持ちもぎゅうぎゅうの圧力で、メンタル疾患を抱える人が続出し休職してしまう。そしてまた残った人に仕事が増える……。

メンタル対策費で億単位のコストをかけている企業も増えています。この負のスパイラルを止めるには、どうにかして、人を定着させるしかないんです。

サイバーエージェントさんでは、いろいろな制度ができて、離職率は下がったそうですね。

曽山 以前は30%ありましたが、今は6%ぐらいまで下がりました。

小室 すごいですね。ノウハウの定着度合いも違いますか?

曽山 ええ。人が残るとノウハウも積み上がって、明らかに業績は上がりますよ。だから、離職させないことが業績を上げるひとつのポイントになることは、身をもって感じています。

小室 離職率の高い会社は、結局、優秀な新人の獲得にまで手が回らなくなってしまいます。だから一度、今いる人材を定着させることに目を向けて、踏みとどまって歯車を押し戻さないといけないのですね。定着に力を入れた企業と、しなかった企業とでは、どんどん二極化が進む気がします。