対中関税を強める“トランプリスク”も
EVなど“新エネルギー車”の購入補助、減税、産業補助策などを延長・拡充する可能性も高い。今回、政府は人工知能(AI)など先端技術の実用化を重視する方針も示した。それは、生産年齢人口の減少への対応としても重要だ。
中央経済工作会議は、今後の米中対立などへの備えとして、消費などの内需を重視せざるを得なかった。トランプ氏は、中国に高関税を賦課する考えを示した。他の主要先進国と中国の貿易摩擦が激化する恐れもある。いずれも半導体など先端分野の製造技術が十分ではない中国にとって打撃だ。
中国政府は、そうしたショックを緩和する一方策として、消費喚起を示したと考えられる。ただ、政府関係者の発言を見る限り、投資牽引型から消費牽引型へ中国経済構造の転換を目指しているとは言いづらい。
日本のバブル崩壊以上の悲劇が起きる
金融と財政政策の緩和は資産価格の下支えに重要だ。リスク資産である株価の維持は、“理財商品”と呼ばれる高利回りの投資商品の破綻抑制や、銀行の新規融資実行のサポートにもなる。投資を積み増し、安価なモノ・サービスの供給を増やす。それにより消費を喚起し、5%前後の経済成長を実現するとしている。そうした政策は、来年以降の中国政府の基本的な経済運営指針と考えられる。
中央経済工作会議の結果から、中国は市場の価格発見機能より、政府による社会経済の統制を重視しているようだ。その発想で、世界第2位の経済規模の中国景気の本格的な回復を目指すことは難しいだろう。
1990年台初頭、わが国では不良債権問題が顕在化した。残念ながら、不良債権処理は遅れ、1997年、金融システム不安が発生し経済はデフレに陥った。市場の価格発見機能は停滞し、社会経済全体でリスクをとる心理は収縮した。それによって、企業は、人々の欲するモノやサービス(新しい需要)を生み出すことができなくなった。そのため、わが国の経済は長期の停滞に陥った。
中国経済は、わが国以上に厳しい状況に陥る可能性がある。このところ、中国はわが国の対中20%を上回るようなハイペースでわが国から工作機械を買い求めた。足許は10%前後かつ不安定だ。