子どもが生まれ、ますます実家に入り浸りに
モヤモヤを抱えたまま暮らしていましたが、やがてA子さんは妊娠しました。すると夫が、「実家の近くに家を建てよう」と言い出しました。詳しく聞いてみると、義実家のほぼ真向かいという近さです。
A子さんと義実家は全く行き来がないので、「そんなに実家に近いのはさすがに……」と言いましたが、夫は「親戚が持っている土地で安く譲ってもらえるからコスパがいい」など、あれこれと理由を付けて説得してきました。
結局、「安く上がるのなら」とA子さんが折れて、家を建てることになりました。
出産はしたものの、子育てが大変になって手助けが必要になると、ますます夫は義実家に入り浸るようになりました。
A子さんも我慢の限界が来て、夫に「そんなに実家がいいのだったら、そっちで暮らせばいいじゃないの」と言うと、夫は義実家に行ったきり、家に帰ってこなくなってしまいました。
メールやLINEを送っても無視され、義実家に行ってインターホンを押しても、義両親が出てきて「息子は会いたくないと言っています」と言われるのみです。
なすすべがなくなったA子さんは、私の法律事務所に、夫が帰ってこないという相談にいらっしゃいました。
結婚してもメインの家は実家
私は事情を聞いて、「この夫は親離れができていないのではないか」と考えました。
これまで、母親とべったりのタイプのマザコン男性や、成人しても自立せずずっと自宅にいる「子ども部屋おじさん」が話題になってきました。
しかし最近は、一応結婚はするものの、その後も実家に軸足がある、いわば「子ども部屋夫」が存在していて、A子さんの夫はまさにこのタイプだと考えました。
実家と行き来があること自体は問題ありませんが、結婚しても本人はメインの家は実家だと考えていて、夫婦生活にあまり向き合わないことが特徴です。
A子さんから依頼を受けて、夫に対して「家に戻ってきてほしい、戻ってこないなら離婚したい」と連絡をしました。
しばらくは無視されましたが、返答がない場合は調停を出す旨を連絡すると、慌てたのかすぐに返事が来て、夫は事務所にやってきました。
夫は、「A子さんのことは嫌いではないが、24時間他人と一緒にいるのは無理だと思う」と話しました。