バブルが起きているのはほんの一部のエリアだけ
要するにバブルと言われるのは、ほんの一部のお話です。2021年、首都圏の新築マンション市場が1990年の平均価格6123万円を超えたことで「マンション価格が90年バブル期超え」となり、メディアが大騒ぎをしました。
しかしその実態をよく見てみると、「都心・駅前・駅近・大規模・タワー」といったワードに代表される上位15パーセントに該当する高額マンションが大量に供給されている一方で、下位15パーセントの「都心から遠い・駅から遠い・築年数が古すぎる」といった条件に難のある中古マンションは相当のダンピング価格で取引され、あるいは取引すらままならない状況です。
そもそも首都圏の新築マンション市場は、ピーク時の2000年に9.5万戸の供給数、約3.8兆円の販売総額を誇っていたものの、現在の供給数は3万戸程度と激減し、販売総額も2.1兆円程度と大幅に縮小しています。
立地条件の悪い新築マンションが減少し、好条件マンションの供給がメインとなった昨今では、過去と平均価格「だけ」を比較しても無意味です。供給戸数や販売総額を見れば、新築マンション市場は実は典型的なデフレ産業だということがわかります。
新築マンション界隈でも“ステルス値上げ”が起きている
実はこの10年で新築マンションの魅力は大きく減退しています。
2002年における東京23区新築マンションの平均専有面積は80平米を超えていましたが、2023年には60平米台と、大幅に縮小しているのです。これは、およそ20年にわたる価格上昇の中で、グロス(販売総額)を上げないための、マンションデベロッパーの企業努力とも言えます。
インフレ時にお菓子の容量を200グラムのところ180グラムにして価格を据え置く、といった戦略と同様で、マンションの専有面積を縮め、天井高も低くすることで体積を縮小、同時にキッチンやユニットバスといった設備の仕様をグレードダウンするなどして、販売総額の上昇を抑制する試みです。
こうなると、ただでさえ価格が高く、しかも収納が少なくて、リビングや各居室が狭いうえに設備グレードまで陳腐化している新築マンションより、過去に供給された中古マンションの方が広くゴージャスで、相対的に魅力的に映ります。このことは各住戸に限らず、エントランスや廊下をはじめ各共用施設についても同様です。