――治すことへの集中力が凄まじかった。

見栄晴 病気になった人って、原因を探りたかったり、納得するために「あのときこうしてたら」ってことをお医者さんに聞きたくなると思うんですよ。

 俺も、治療が始まるタイミングで耳鼻科の先生に「喉がチクチク痛かった最初の段階で先生のところに診察に来てたら、こうなってないですかね」って聞いたことがあったんです。そしたら、先生が何にも返事しなかったの。

 そのとき、「癌のステージ4になった人がそんな細かいこと聞いてどうすんだろう? 治療のことを一生懸命考えてくれてる先生に、なんて失礼なこと聞いちゃったんだろう」って気付いたんです。そこから、過去のことを振り返るのはやめて、前向きなことだけ考えようって思うようになりました。 

今までわからなかった「頑張れ」が、大好きな言葉に

――今後のことがわからない状況下でインスタグラムに近況報告を載せるのは、勇気がいることだったかと思います。

見栄晴 こんなにいろんな人が心配してくれてるんだから、何かを残さないといけないと思って、元々あんまり投稿してなかったんだけど、マネージャーと相談してなるべく投稿することにしました。「正直に全てを伝えたい」という想いが強かったです。もし余命宣告されていたら、それも書いてたと思う。

――「現実を受け止め受け入れて、笑顔で明日に向かって行きます」という一文も印象的でした。見栄晴さんのその明るさに安心した人も多いかと思います。

見栄晴 暗くなってもしょうがないっていうか、治すために起こる副作用とかは受け入れないと、治らないから。俺ですら嫌だったんだから、たとえば「髪の毛が抜ける」なんてことは女性はやっぱりツラいと思うんだけどね。

――コメントも読まれていましたか?

見栄晴 全部読みます。周りの反応を見た嫁が「私ならこんなにたくさんの人に心配してもらえないよ? あなたは幸せ者ね」って言ってくれたんですけど、本当にいろんな人が「頑張れ」と言ってくれて、その言葉の本当の意味がわかりました。

芸能界にいると「頑張ってください」ってたまに言われるんだけど、あんまり意味が分かってなかった。でも癌になったときの「頑張れ」って本当にヒシヒシと伝わってきて、ものすごく効くんですよ。

 病院内でも、放射線治療を受けるときにすれ違う患者さんが「見栄晴くん、頑張ってよ!」って言ってくれて、「お互い頑張りましょう」って返したり。こんなに頑張れって言われるんなら、この人たちのためにも頑張って治そうって思えたんです。だから、「頑張れ」が好きな言葉になりました。

――ご病気の方への「頑張れ」は禁句のような風潮もあって、声掛けに悩む人も多いかと思います。

見栄晴 それは、「頑張れ」っていう言葉の意味がわかってない人に言うのが無意味ってことなんだと思う。僕の場合は頑張らないといけないことがわかってたから、言ってもらった「頑張れ」に、素直にありがとうございますって思えたのかな。

「癌は治る。頑張れ。俺のドラマはダメだったけど(笑)」ステージ4のがんで入院した見栄晴(57)に届いた木梨憲武からの粋すぎる“メッセージ”「普段こんな真面目なことを言う人じゃないのに」〉へ続く

オリジナルサイトで読む