浮動票をつかんだ石丸氏、つかみ損ねた蓮舫氏

石丸氏の強さは、新人であることに加え、自民党や公明党の支援を受ける小池氏、離党したとはいえ元は立憲民主党議員で、共産党と連携している蓮舫氏とは違って、政党の色がついていなかった点にもあるだろう。既存の政党に失望している人から見れば、石丸氏のしがらみのなさは、新鮮にうつったのかもしれない。そこでうまく、浮動票をつかんだのだろう。

対して蓮舫氏は、あきらかに浮動票をつかみ損ねたように思う。

今年4月に行われた衆議院東京15区の補欠選挙では、立憲民主党の候補は共産党と組むことで、両党の組織票をもとに、浮動票も獲得して、ダントツの1位で当選した。

しかしそのわずか2カ月余り後、政治と金の問題で自民党には逆風が吹き、政権交代もあり得るのではないかという声さえあったなかで行われた知事選で、まさか蓮舫氏が3位に沈むとは、立憲民主党では誰も想像もしていなかったのではないか。

立憲民主党代表代行の辻元清美氏は、「政党としても私個人としても、やっぱりもう古くなったのかな、もう通用せえへんのかな」とこぼしていたが、偽らざる本音だろう。

政策以前に選挙の「やり方」に問題

私はここまで政策の話をなにもしていない。辻元氏の言うように、政策以前に選挙の「やり方」がまずかったと思っているからである。

4月の東京15区補選は元区議が候補であり、安定感があった。そういう選挙をすればよかったのである。

ところが都知事選では、共産党と組んだことで、近年の共産党と立憲民主党がもっている「弱点」が前面に出た。とくに取れるはずの女性票、そして若者の票を、ことごとく取り逃したと思われる。

踊る“クラブ街宣”の「内輪受け」感

私が蓮舫氏の苦戦を確信したのは、新宿駅のバスタ新宿前で、音楽に合わせて踊る“クラブ街宣”動画がXで盛んに出回っているのをみたときである。

「蓮舫さんが昔踊っていた大好きな曲です。だからみんなも踊ってね!」「みんなすごいキレイだよ!」。そして「蓮舫! 蓮舫!」という掛け声とともにスマホの明かりを振り、30年以上前のドラマ「君の瞳に恋してる」の主題歌に合わせて熱狂的に踊るひとたち。

皮肉な話だが、おそらくこれを企画したのは若い人たちだろう。選挙対策本部も、若い層を取り込もうとしたのだと思う。しかし肝心の若者の大部分には、むしろバブルの匂いと「強烈な内輪受け」を感じさせたのではないか。そしてそれは、若者との分断をあぶり出す結果となってしまった。

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