飲む必要のない薬を飲み不健康になる

コレステロールに関する“常識の遅れ”は脂質低下薬の使用にも見られます。

日本では、中高年の女性にコレステロールを下げる薬を飲む人が多数います。しかし、女性に対してコレステロール値を下げる薬を出しているのは、日本だけです。欧米では、女性には“脂質低下薬”なるものは処方しません。たとえ糖尿病でも、薬で下げることはしないのです。

なぜか? 飲む必要がないからです。

もともと女性は男性に比べるとコレステロール値が高いのですが、心筋梗塞になる人は少ない。その割合は、男性の3分の1~5分の1ほどです。

女性は閉経すると、女性ホルモンの分泌量が減るため、コレステロール値がじわじわと上がってくる傾向が見られます。体を守るための自然な反応であり、コレステロール値が上がるのは、いわば当然のことです。なので、欧米では当たり前のように放っておかれます。

ところが、日本では「コレステロール値が高い=病気」と診断されてしまいます。そして、薬を処方されてしまうのです。

和田秀樹『コレステロールは下げるな』(幻冬舎新書)

しかも、日本の基準値は欧米に比べ、低く設定されています。少なくない患者さんが「異常」と判断され、薬を飲んでいるのだから、大変です。

コレステロールを下げたらどうなるかは、これまでさんざん話してきました。死亡率は高くなるし、がんで死ぬ人も増えていきます。

下げる必要のないコレステロールを、無理やり薬で下げている。飲む必要のない薬を飲み、がんや早死にのリスクを高めている――。この現実を、女性のみなさんはどう思うのでしょうか。ご家族はどう考えるのでしょうか。

私はとても恐ろしいことだと思っています。だから非難されるのを覚悟で、このような声を上げているのです。

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