まずは1対1の信頼関係をしっかりと構築するところから始めましょう。頻繁に1ON1の場を設けて、こちらから「不安に思うところはないか」「気になっていることはないか」と問いかけてあげてください。決して自己中心的というわけではないので、しっかりと根拠を示して納得すれば受け入れ、次第に心を開いてくれます。

ただし注意も必要です。ある企業の部長さんが目に見えてやる気を失った部下を心配して、1ON1をしました。

「最近、元気がないね。職場に不安や不満があるのかな」
「はい、まあそんなところです」
「やっぱりそうか。この機会だから、遠慮せずに何でも言ってごらん。改善の方法を一緒に考えてみよう」
「大丈夫です。言えないことなんで」

と回答を拒み、間もなく辞職してしまいました。部長は「給料が低いとか休みが取れないとか、そんな理由だろう」と思っていたのですが、後に人事部から真相を聞かされ、じつは自分の言動が原因だったと知ったそうです。

もしコロナ世代が心を開いていないと思ったら無理はせず、必要なことに関してだけ、根拠を示しつつ話すようにしてみましょう。

コロナ世代が大好きなキーワードとは

先述の「出社ルール」の話で言えば、完全リモート/在宅○日・出社○日/フル出社の場合と、それぞれの生産性や達成率のデータを示し、「だから出社に決まったんだ」と説明すれば「なるほど、確かにそうです」と腹落ちします。リモートだと必要十分のコミュニケーションしかしませんから、直接に教わる機会がなかっただけなのです。

また、コロナ世代は「Z世代」(1990年後半〜2010年前半生まれ)と呼ばれる年代層とも重複します。幼少期から多様性に配慮した教育を受け、平等とフェアネスに対する意識が強く、コスパやタイパなど効率性や合理性の追求が大好きです。物心ついた頃からスマホがあって(初代iPhoneの日本発売は07年)SNSを使いこなしているので、広くて浅いフラットな人間関係の構築は得意です。

じつは私の会社はコンサルティングが主たる業務ではありますが、組織構築のモデルケースとして東京でアイスクリーム店を経営しており、常時40人ほどの学生アルバイトを雇っています。学生たちとのやり取りが、格好のZ世代調査になっています。

たとえば、こんなことがありました。私が店舗の様子を見に行くと、アルバイトに「社長、何しに来たんですか? こちら側に立ち入るなら、ちゃんと手を洗って制服を着てください」と厳しく“指導”されました。肩書は役割の違いでしかなく、仕事の前では年齢の上下など関係ないというのは平等とフェアネスの意識からだと思います。