2つ目の誤算「プラチナバンド問題」
この問題に微妙に絡んでいるのが、2つ目の誤算であるプラチナバンド問題です。プラチナバンドとは、我が国の電波利用においてもっとも携帯電話に適してつながりやすい、700MHzから900MHzの周波数帯のことです。国内のプラチナバンドは先行3大キャリアに独占され、現在空きはありません。
後発の楽天に割り当てられた周波数は1.7GHzであり、屋外では大きな問題はないものの室内での先行3社に比べた接続の悪さは利用者の知るところです。すなわち、いかに基地局整備を進めようとも、プラチナバンドを持たない現状では「つながりにくい楽天」は解消されず、飛躍的な契約者数増強は望めないのです。
楽天のプラチナバンド問題については、同社が業界参入を決めた当初から業界内では「プラチナバンドなしで、どう戦う気なのか(大手キャリア幹部)」と不安視する声と、同時に「楽天、臆するに足らず(別の幹部)」との声も聞こえていました。
しかし、この段階で楽天は脳天気にも、「うちの1.7GHzはつながりやすい(山田善久社長、当時)」と自信を見せていたわけで、この点での見通しの甘さもまた、思い通りに事が運ばなかった大きな要因のひとつなのです。
初動の遅れが「つながりにくい楽天」を決定づけた
楽天が総務省に対してプラチナバンドの再分配要望を初めて出したのが、事業開始から半年以上経た20年12月です。1.7GHzでやってみたが、やっぱりつながりが悪い。これではどうにも勝負にならない、と遅ればせながら気がついたのでしょう。
事業開始前から折衝を進めていればもっと早くに解決していたかもしれない問題が、見通しの甘さゆえの初動の遅れによって「つながりにくい楽天」を決定づけてしまったとも言えるのです。
ちなみに、楽天のプラチナバンド獲得に関しては23年4月に、3大キャリアの携帯電話700MHz帯と隣接の地上波テレビ帯などの間に存在する空き部分に3MHz幅×2の携帯電話4Gシステム導入を検討し、それを楽天に優先供与する見通しにはなりました。しかし、先を急がざるを得ない楽天はこれを待っている猶予はなく、先に書いたようにプラチナバンドを使用したau回線を全面的に借用することとなったのです。