「客を囲い込めばなんとかなる」と考え大失敗
それが「買買買、合合合、圏圏圏、大大大、好好好」(発音は「マイマイマイ、フーフーフー、チュエンチュエンチュエン、ダーダーダー、ハオハオハオ」というもの。意味は「技術はよそから買ってくる。買えないものは他社と提携すればいい。ともかく客を囲い込んで会社をでっかくすれば大成功なのである」となる)という、これぞ成金思考というEV開発戦略だ。
このEV事業が奇跡の大成功を収めてテスラぐらいの時価総額になっていたら、50兆円の債務も返せたのだが……。しかし、車作りはそう甘くはない。なかなか量産できず苦しみ、体制が整ったのは2023年に入ってから。その頃にはEVが量産できればそれだけで株価爆上がり……という時代は終わり、激しい値引き競争をくり広げる戦国時代に突入していた。
親会社が死に体ということもあり、1年後に存続しているかどうかもわからないメーカーの車を買おうという物好きはそうそういない。半年で1000台ほどを量産したが、その後は工場の運用もストップしているという。EV事業に突っ込んだ資金は約500億元(約1兆円)と見られている。それで作った車は1000台で打ち止めとなると、1台あたりの開発・製造コストが10億円という超超超高級車という計算になる。
成金が甘い考えで車作りに参入し痛い目に遭った……というのが当時の印象だったが、内情がわかると「もう不動産は無理。最後のギャンブルにでるしかない!」という心境だったのだろうか……などと邪推してしまう。
「2つの大問題」を解決できる見通しが立っていない
このように経緯をまとめると、恒大集団の台頭と失墜、そして中国不動産危機は政策に振りまわされた感は否めない。
大都市だけではなく地方都市も発展させようという、麗しい目標を掲げた新型都市化政策が地方不動産バブルの引き金となり、ひたすらに債務を積み増して肥大化する新興不動産デベロッパーというモンスターを生み出した。その債務膨張を抑止しようと規制をかけると、今度は資金不足から建設現場の工事がストップするように。
ならばと、工事資金に用途を限定する形で銀行から不動産デベロッパーに融資させているが、作りかけ物件が多すぎて終わりが見えない……これがイマココの現在地である。抜本的な対策ではないため、明確なゴールが見えないままでの泥沼の撤退戦が続いている。
その場しのぎの対策しか出てこない中国、その様はバブル経済崩壊後の日本とかぶってみえる。税金で銀行を救うのかとの世論の批判が強く、日本は金融システムの救済が遅れた。そのことがバブル崩壊のダメージが拡大した要因になったとされる。
中国は金融機関ではなく不動産デベロッパーが俎上に上がっている点は大きな違いとはいえ、「建設中不動産の完成」と「未払い金の支払い」という2つの大問題は、公的資金の投入など抜本的な対策がなければ解決できず、遅れればダメージが大きくなるばかりという点で構図が似ている。