女性トップへの男性の妬み、やっかみ
しかも女性がトップになることに男性の妬みややっかみはつきものだ。たとえば2021年に労働組合の中央組織の連合の会長に女性初の芳野友子氏が就任したが、本来は主要産業別労働組合のトップから選ばれるのが通例だが、トップ経験のない芳野氏はまさに異例の会長就任だった。そのときも「女性で大丈夫なのか」、「芳野が手を挙げるのを止められなかったのか」といった連合OBの男性陣からも不安視する声が少なくなかった。
芳野氏も就任直後のインタビューで「私が就任するのが濃厚という報道が流れると、男性たちの多くは『(連合が難局を抱えている)このタイミングで大丈夫か』と心配してくれました。一方、女性組合員や労組のOGたちからは『誇りだ』『勇気をもらえる』『あなたなら大丈夫』『とにかく支える』といった激励のメールやメッセージをたくさんいただきました」と述べている(2021年10月6日『朝日新聞電子版』)
「社長のお気に入り」という根も葉もないウワサ
加えて、大企業の場合、役員の圧倒的多数は男性であり、これまで役員レースに女性が入ることはなかったが、ひとたび女性が選ばれると、男性の嫉妬や妬みがすごいという話はよく聞く。女性の役員昇進に関しては特殊な軋轢が生じると語るのは建設関連企業の人事部長だ。
「経営トップの推薦で当社初の生え抜きの女性役員が誕生しました。もちろん仕事もできるし、部下指導などマネジメント力もあり、人事としても役員として申し分のない女性だと考えていました。ところが役員に就任したとたんに『彼女は社長のお気に入り。裏で何かあるのでは』と変なウワサが幹部の間で流れ出したのです。根も葉もないウワサですが、社長の一本釣りというだけで彼女はいわれのないプレッシャーを受けるはめになったのです」
社員から役員に昇進するのは極めて難しい。大手食品会社では同期入社組から役員が出るのは珍しく「数年に1人ぐらいしか役員に昇進しないので社内では“ビンテージ”と呼ばれている」(同社人事部長)。それだけに女性が選ばれると、選ばれなかった男性の嫉妬や妬みが渦を巻くことになる。