可能性は40%の「意図的な行動」にある

ここで、またさきほどの円グラフに戻ってみましょう。例の映画館にいた100人全員が一卵性双生児で、誰もがそっくり同じ生活環境にあったとしても、幸福度にはなおも違いがあるでしょうか? その質問には、次のように答えられます。「遺伝的に決定される性格や生活面でのさまざまな環境を考慮に入れても、幸福度における40%の違いがまだ残る」と。では、この「40%」をつくりあげているものとは何でしょうか?

遺伝子や、環境のほかに、重要なものが1つ残っています。それは私たちの「行動」です。つまり、幸福になるための最大の鍵は「私たちの日々の意図的な行動」にあるのです。遺伝子の性質を変えること(不可能ですが)にあるのではなく、「環境を変えること」(つまり、富や魅力、もっといい同僚を求めること)にあるのでもないのです。それを頭に入れると、あの円グラフが表わしているのは、幸福度が高まるために、私たちが40%ならコントロールできるということです。その40%とは、日常生活での行動や考え方を通して幸福度が高まる余地やチャンスがたくさんあるという意味でもあるのです。

これはじつに素晴らしい情報です。つまり、とても幸せになっている人々が自然にどんな行動をとり、どんな考え方をしているかを注意深く調べれば、誰もがいまよりずっと幸せになれるのです。

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幸福な人の考え方や行動パターン

これまで誰も踏み込んでこなかった幸福度が高まるための潜在的な可能性こそ、私が研究の大半を捧げてきたものです。「非常に幸福な人々」と「不幸な人々」を系統的に観察し、比較し、実験を行なってきました。次にあげるのは、私たちが観察したなかで、「最も幸福な人々の考え方や行動パターン」です。

・かなりの時間を家族や友人とすごし、その人間関係を大切にして楽しんでいる

・誰に対しても感謝を表わすことが苦にならない

・同僚や通りすがりの人にまっ先に支援の手を差し伸べる場合が多い

・未来を考えるときは、いつも楽天的である

・人生の喜びを満喫し、現在に生きようとしている

・毎週、または毎日のように身体を動かすことを習慣としている

・生涯にわたる目標や夢(たとえば、世の中の不正行為と闘うこと、自分が強く信じている価値観をわが子に教えること、戸棚をつくることなど)に、全力を傾けている

・最後に、これは重要な点として、最も幸福な人々にも、当然、ストレスや災難はあるし、悲劇さえ起こり得るのです。普通の人と同様に、つらい環境におかれると落ち込み、感情的になるでしょう。しかし、彼らの秘密兵器は「困難に直面したときに対処する考え方や強さ」にあります。