食事中は声をかけてはいけない理由
また同居していて普段から食事を共にしている場合は、嚥下力が落ちていないかはチェックしたい。過去に誤嚥性肺炎を起こしたことがあったり、脳梗塞など脳血管疾患の既往があったりする場合、それらはなくとも食事中にむせ込むことが多い人、この1年間で体重が減少傾向にある人は、餅の摂食は極めて危険である。
これら以外の人であっても、安心はできない。とくに「ひと口が大きい」「よく噛まずに飲み込む」「食べるのが早い」という元気な人は要注意だ。注意を促しても「なにを言うか、俺は絶対に大丈夫」と笑い飛ばすような、自信に満ちた人こそ危ないと思ったほうがいい。
食べる際には、複数の家族の目の前で食べてもらうことは徹底したい。窒息の場合、発生してから発見までの時間が生死を分けるからである。勝負は4分間。発見した場合の処置は日本医師会が出している「救急蘇生法」を参考にしてほしいが、処置とともに救急要請も同時に行うことが必要だ。
餅を口に運ぶのを見たときには、完全に飲み込むまで家族は目を離してはいけない。「気をつけてね」などと、飲み込もうとしている最中に話しかけるのもNGだ。返事をしようと息を吸ったタイミングで喉に貼りついてしまうかもしれないからだ。
それでも食べたい場合は「介護餅」を使ってみる
ちょっと視点を変えて、「餅」に工夫をこらすという手もある。私は料理の専門家ではないから詳しくは述べられないが、ネットをみると、豆腐と片栗粉を混ぜ合わせたものを電子レンジで加熱して作る「代用餅」のレシピを紹介しているサイトもある。
また粘り気を抑え歯切れを良くしたり、歯茎でつぶせたりするタイプの「介護餅」も考案され、ネット販売もされている。いずれも本来の粘り気ある餅の食感を存分には楽しめないかもしれないが、お正月気分を味わいたいという高齢者に活用できるアイテムではなかろうか。
いったん本題と少し離れるが、年末年始、せっかく親御さんと話す時間が持てるなら、この機会にアドバンス・ケア・プランニング(ACP)について話し合ってみるのもよいだろう。
ACPとは「将来の変化に備え、将来の医療およびケアについて、本人を主体に、その家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援する取り組み」のことを言い、「人生会議」とも呼ばれるものである。