やっと国会での議論が開始か

しかしその後も、自民党内でそれに応える動きはまったく見られなかった。

そこで岸田氏は、去る9月13日に行われた内閣改造・自民党役員人事の際、党の政策の取りまとめに当たる政調会長に萩生田光一衆院議員を再任した時に、「皇位継承策の作業を急がなければならないという問題意識」を明確に伝えた。

その意向を受けて、萩生田氏も以下のように言明している(産経新聞9月27日付 )。

「(有識者会議報告書の検討を昨年1月に政府から国会へ委ねられて以来)この1年、(自民)党でそれほど動きがなかったので、私のもとで(党内の意見集約を図る)受け皿を作っていかなければならないと思っている」と。

加えて、新しく衆院議長に就任した額賀福志郎氏は10月20日の記者会見で、国会における安定的な皇位継承をめぐる議論を前進させる意欲を示している。「各党の協議の経緯や状況を把握した上で立法府の考え方を整理していく」と(読売新聞オンライン、10月20日、18時43分配信)。

さらに岸田氏は、同23日の国会での所信表明演説の中で「皇族数の確保のための具体的方策」について、「『立法府の総意』が早期に取りまとめられるよう、国会における積極的な議論が行われることを期待します」と訴えた。

やっと国会が重い腰を上げる可能性が見えてきた。

岸田首相の巧妙な表現

岸田氏は令和3年(2021年)9月9日のツイッター(現X)で、この問題について次のように述べていた。

「旧宮家の男系男子が皇籍に復帰する案も含めて、女系天皇以外の方法で検討してまいります」

これはなかなか巧妙な表現になっている。まず、議論を進めようとする場合に最大のブレーキになると岸田氏が考えているらしい、「女系天皇」の可能性をあらかじめ排除する姿勢を鮮明にしている。

一方で、古いルールにこだわる政治家たちが掲げる旧宮家系子孫の皇籍取得を可能にするというプラン「も含めて……検討」と明言した。これによって、彼らも巻き込んで議論を促そうとアクセルを踏んでいるように見える。

ただし旧宮家案「も含めて」ということは、当然、それ“以外の選択肢”も検討することを含意している。それは何か。

提案されている5つのプラン

これまでに提案されている主なプランは次の5つだろう。

① 女性天皇プラン=内親王・女王にも皇位継承資格を認める。男性天皇の場合と同じく、その配偶者やお子様は皇族の身分を保持される。

② 女性宮家プラン=①を踏まえて、内親王・女王が婚姻後も独立した宮家の当主として皇室にとどまられる。男性宮家と同じく、配偶者やお子様は皇族の身分を保持される。

③ 女系天皇プラン=①②を踏まえて、女性天皇・女性宮家の当主のお子様にも、男性天皇・男性宮家の当主の場合と同じく、皇位継承資格を認める。「皇統に属する皇族」に男女の差別なく皇位継承資格を認める。

④ 内親王・女王が婚姻後も皇族の身分にとどまるだけのプラン=①②と異なり、配偶者やお子様は「国民」と位置づける。有識者会議報告書に盛り込まれたプランの1つ。

⑤ 旧宮家系子孫が現在の皇族と養子縁組をして、新たに皇籍を取得するプラン有識者会議報告書に盛り込まれたプランの1つだが、その配偶者や養子縁組後に生まれたお子様の位置づけが皇族か国民か、報告書ではあえて言及していない。

これらから消去法で考えると、①「女性天皇」②「女性宮家」④「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分にとどまる」という3策が、その候補になる。