「尖閣を守ってやる」米国への見返りは……
10年9月の中国漁船衝突事件の後、11月に来日したオバマ米大統領は菅直人首相(当時)に、日本にTPP(環太平洋経済連携協定)に加入するように勧めた。TPPは加盟国間の相互の市場開放を名目にしてはいるが、要するに米製品購入の強要であることは、ペリー来航の昔から一貫して変わることはない。
衝突事件直後にクリントン米国務長官が「尖閣は日米安保の対象」と一言言ってくれたおかげで、日本は一時的に助かった。そこでオバマ大統領は「尖閣を米軍が守ってやる見返りに、日本の市場をよこせ」と菅首相を脅したわけだ。
野田総理は今年8月にTPP参加表明をすると米国に約束していたが、国内に反対論が根強く、9月初旬のAPEC首脳会議でも参加表明できなかった。
そして9月中旬から、中国の反日騒動が始まった。中国からみれば、日本のTPP参加見送りは「米軍尖閣を守らず」を意味する。尖閣に絡めて対日圧力を強める好機と捉えたことは間違いあるまい。
果たして、困惑した米国のレオン・パネッタ国防長官は、同月16日に訪日。まず自衛隊出動がないことを確認した後、19日に北京で習近平次期国家主席と会談。「中国は軍事行動を直ちに取らない」という約束の見返りに、中国の領有権主張(無茶苦茶な主張だが)に理解を示した。
米国が理解を示した主張なら、国際社会も理解を示さなくてはならない。かくて中国は国連総会で主張を展開し、日本は従来の「領土問題は存在しない。従って中国と尖閣について話し合う必要はない」という立場から後退を迫られ、今後は尖閣の領有権を巡って、中国と話し合わなくてはならなくなっているのである。