「あいまい言葉」は脳の成長を阻害する

コウタは、発展途上にある前頭葉を使って、自分なりに「ちゃんと」片づけているつもりだったのでしょう。しかし、母親に毎回ダメ出しをされて、すっかり自信をなくしてしまいました。そのような状態が長く続くと、親に反抗するようになってしまうケースは決して珍しくありません。

ほかにも、私たちのもとを訪れる親御さんの中には、こんなケースがありました。子どもが玄関先にランドセルを置きっぱなしにしていたので、「ちゃんと片づけなさい」と注意したら、今度はリビングにポンと置いたというのです。

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これもコウタのケースと同じで、親は「子ども部屋」に片づけるのが「ちゃんと」だと思っていますが、子どもは「リビング」が「ちゃんと」した場所だと思ったのでしょう。しかし、親御さんはそのことがわからず、さらに、「何でちゃんと片づけないの!」と子どもを追い詰めてしまいました。

「ちゃんと」という言葉でどれだけ注意しても、子どもは何をしていいかわからず、混乱していくばかりです。このようなディスコミュニケーションを続けると、親子の関係性はどんどん悪化してしまうでしょう。

言葉がけは「ロジカルに」「フルセンテンスで」が基本

親は、わが子が幼いうちは「あいまい言葉」を使うべきではありません。そのことをする必要性などがしっかりと理解できるように、「ロジカルに」「フルセンテンスで」教えてあげましょう。

たとえば、部屋の床に漫画が散乱していたなら、「漫画を読み終わったら本棚の元の場所に戻そうね。そうすると次に読むときに見つけやすいよ」などと説明してあげましょう。どのように片づけるのか、なぜ片づけるのかがわかれば、言われた子どもは混乱せずに済みます。

「ロジカルに」「フルセンテンスで」言葉をかけることは、前頭葉の発達にも役立ちます。前頭葉は、物事を筋道立てて考えていく、思考するための脳です。「おりこうさんの脳」(大脳新皮質)に論理的な言葉をたくさん入れてあげることで、前頭葉への神経回路が構築されやすくなります。脳がどれだけ豊かに育つかは、親からよい言葉をどれだけ多く与えられるかにかかっています。

自分の力で乗り越えていくための知恵を授けよう

「ロジカルに」「フルセンテンスで」の言葉がけは、幼児の頃から始めても早過ぎることはありません。

たとえば、子どもが擦り傷を作ったときには、「痛いの痛いの飛んでけ~」と言うのではなく、「これぐらいの傷なら消毒液を塗って、絆創膏を貼っておけば3日で治るよ」などと具体的な対処方法を教えてあげましょう。

そして3日後、「きれいに治ったね」と傷の治りを確認してあげます。そうすることで、また同じようなけがをしたときに、「これくらいなら大丈夫。消毒液を塗って絆創膏を貼っておこう」と自分で判断ができるようになります。