日本の技術にはリスペクトを持っている

「モデルSをどう日本で売ればいいのか。日本法人の社長候補も探している」

と相談されたんです。でも、モデルSは性能は凄いけどゴツすぎる。日本の狭い道路事情には合っていなかった。そもそも、トヨタや日産など国産メーカーの勢力も強い。「もっと小さな車が出た時、また考えたらどう?」と伝えたら、彼も「確かに幅がデカすぎた」なんて笑っていました。

イーロンは、日本の技術自体には、リスペクトを持っているようだった。何しろモデルSに使われているのは、パナソニックの電池。彼らが車を作っているのも、元はトヨタとGMの合弁会社だったNUMMIの工場です。ただ、彼は当時、こんな風にも言っていた。

「ベンチャー企業の社会における最大の役割は、国家権力への反逆だ」

だけど、日本は既得権益の塊のような国。自動運転にしても、シェアリングエコノミーにしても、彼が思い描く自由なイノベーションが起こりそうにない。残念ながら、あまり魅力的なマーケットには映らなかったのかもしれませんね。

それでも、日米を代表する実業家同士、三木谷氏がテスラのオフィスを訪ねたり、時には一緒にカラオケをしたり個人的な関係は続いたという。

最後に直接会ったのは、去年の11月頃。ちょうどイーロンが約440億ドル(約6.4兆円)を投じてツイッター(現X)を買収した直後です。コロナ禍もあり、3年ぶりの再会だった。息子と一緒に現れた彼は、少し痩せたように見えたけれど、いつも通りの調子で「ハーイ、ミッキー」と。日本からお土産に持っていった焼酎を手渡し、お互いの近況やビジネスについて1時間ほど話し合いました。

「日本はユーザー数は…」ツイッター買収で聞かれたこと

ツイッターの話題も出ましたね。ツイッターのユーザー数は全世界で3億3000万人以上ですが、うち、4500万人のユーザーを抱える日本はアメリカに次ぐ大きなシェア。彼からも、

「日本はユーザー数はいい感じだけど……。何ができるかな」

と問いかけられました。まぁ僕が意見するまでもなく、既に日本の詳細なデータが頭に入っている感じでしたが。ただ、その後は有料ユーザーを増やそうとしたり、様々な改革に踏み切っているものの、逆に広告収入の大幅な減少を招いているのが現実です。