銀行借り入れが難しい中小企業が集中
高い利回りの要素の一つに規制がある。中国では信託商品に加え、銀行が設定や販売に関与する投資商品もある。一般的に“理財商品”と呼ぶ。銀行が扱うため、銀行理財商品と呼ぶこともある。
銀行は資金決済、信用創造、金融仲介など社会と経済の安定に欠かせない機能を持つ。そのため、銀行への規制は強化された。また共産党政権は銀行の預金と貸し出しの金利を実質的に管理している。銀行は信用リスクの低い大企業などへの貸し出しを優先した。
一方、ノンバンク向けの規制強化は遅れた。リーマンショック後、中国などでノンバンクのローン(レバレッジの提供)を、いかに監督するかが金融行政上のテーマの一つとなった。銀行借り入れが難しい中国の中小企業などにとって、ノンバンクの重要性は高まった。信託会社は高い利回りを宣伝文句に資金を集め、それを企業などに貸し出した。
地方政府の幹部も出世争いに利用
中国では、信託商品などに国や地方政府などの“暗黙の保証”がついているとみる投資家は多かった。それも、信託商品の需要増加を支えた。暗黙の保証とは、元利金支払いが行き詰まっても、「担保の売却や政府の支援などによって投資家は損失を被らない」との思い込みだ。今回の償還遅延によって、そうした思い込みはもろくも崩れ始めた。
共産党政権は、2014年まで地方政府の資金調達を厳格に規制してきた。基本的に地方政府は、認められた債券の発行以外の手段で資金を調達することが難しかった。
その一方、地方の共産党幹部は、中央政府から課される経済成長率目標を達成しなければならなかった。それができないと出世ができないからだ。そのため資金を自力で調達し、道路や鉄道の建設を増やして生産活動を活発化し、雇用と所得の機会を増やすことが必要だった。