業界全体を俯瞰できている人材は少ない
このように、マップを作ることによって、「医療機器で日本企業が海外企業に負けているのはなぜか」という疑問を深掘りできます。
例えばグループ①については、「日本企業の製品開発力が高くないのはなぜか」という、一段深い疑問が生まれてきます。
日本では、厚生労働省が決めた診療報酬の点数で医療費が決まります。病院の収入はほぼ診療報酬で決まってしまうので、医療機器の購入に使える金額に限りがあります。高い値段の医療機器は買えません。
医療機器メーカーとしては、高額な医療機器を作っても回収に見合う金額設定ができないとなれば、開発投資が巨額でリスクも高い先端医療機器を作るのを渋るようになります。その結果、日本企業は総じて製品開発力が弱くなっていったのではないでしょうか。
つまり、グループ①については、診療報酬の決め方という国の施策に問題があるのではないかという仮説が立てられます。とするならば、その解決のためには国に動いてもらう必要があります。
グループ②については、国というよりも、企業のビジネスモデルの問題、グループ③は、企業の商品ラインナップや営業力の問題でしょう。
このように、グループによって、課題解決のために打つべき手が違うこともわかります。
この医療機器マップを作ってから、政府、医師会や研究機関、医療機器メーカーなどに呼ばれて講演をする機会が多くなりました。専門家から信頼され、専門的な話ができる相手だと認められた証拠だと自負しています。
皆、自分の専門とする領域については詳しく知っているのですが、専門領域を超えた全体像を見渡すことは意外にやりません。だからこそ、マップを作ると、新しい発見があるのです。