鍛冶の神のもとから火種を盗み出して人間に与えた

プロメテウスがゼウスに見せた肉は2つ。ひとつは「骨を脂肪でくるんだもの」、もうひとつは「肉を皮でくるんだもの」。中身が肉なんだから、2番めのほうがいいに決まっているけど、プロメテウスは骨をうまそうな脂肪で包みこんでいたので、こっちのほうがおいしそうに見えた。頭いいな……。ゼウスはまんまと、「骨を脂肪でくるんだもの」を選んでしまう。

そのせいで、神々のぎしきでは、骨だけがささげられるようになったんだとか。その一方で、人間たちは肉を食べられるようになったのである……ありがとう、プロメテウス!

うまくゼウスをだましたプロメテウスだが、人間のことを思って、さらにがんばってくれる。

というのも、だまされたゼウスはムカッ! その腹いせに、人間に「火」をあたえなかったのだ。

火がなければ、食材を温めることも、寒いときにあったまることもできない……。人間の味方であるプロメテウスは当然、これを気の毒に思った(いつも、ありがとう!)。

人間のためになんとか火を手に入れようと、かじの神で火をあつかうヘパイストスのところへいく、プロメテウス。そこで、火種をぬすみ出した。そこまでして、人間に火をあたえたのである(なんと、やさしい!)。

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「永遠に肝臓をついばまれる」ゼウスが与えた罰

だが、プロメテウスはこのことで、ゼウスを完全に怒らせてしまう……。

「お前には、つらいバツをあたえなければならんようだな!」

ゼウスによって、プロメテウスは、東の果てにあるコーカサスの山の岩にしばりつけられてしまう。そして、オオワシにかんぞうを食べられるというバツが、あたえられることに……。

しかもそのかんぞうは、ゼウスの力によって毎日、元通りに治る。つまり、プロメテウスは永遠に痛みに苦しめられることになったのだ。プロメテウスよ、人間のことを思ってそこまで……。

ちなみに、ギリシャ神話には、他の神話とは、ちょっとちがうところがある。それは「人間がどうやって生まれたか」について、これが正しい! という説が決まっていないところだ。

「プロメテウスが土と水から人間を作った」という人がいたり、地域によっては「人間は大地から生まれた」と考えたりするところもあったけど、基本的には「人間は最初からいたよー」というのが、ギリシャ神話のスタンス。

ギリシャ神話の神々がやたらと人間っぽいのは、「人間ありき」の世界観だからなのかもしれない。