児相に通告が入って女児の傷やあざが確認されていたのに

さらに、「既存のシステムとAIシステムを併用している為、日々の経過記録やリスクアセスメントシートの同期作業が必要だった」とも資料にはあるが、同期していたのであれば、長期欠席をAIは「リスク高」と評価しなかったのか? そんなはずはない。累積1万件を超えるデータが蓄積されており、「AIが過去の知見に基づき、総合リスク、再発確率、過去の類似ケースを即座に導きます」とあり、かつ、再発率との関係において「過去に通告歴がある」という場合は再発率が上昇する、とシステムには入っているのだ。この家庭は施設からの家庭復帰後に通告が入り、傷・あざが確認されている。これだけでも虐待リスクは高いと言えるのだ。

さらなる大きな疑問は、三重県議会全員協議会での報告の中で、県担当者がAIの評価について「感覚的にもしっくりくる評価だった。違和感はなかった」と述べている点だ。まさにこの担当者の認識が、AIの数字に反映されたということだ。担当者の経験年数は分からないが、児童相談所で長年経験を積んだ福祉司、あるいは心理司なら、大きな違和感を抱いたはずだ。「こんなに数字が低いはずがない」と。

出典=厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告)の概要」社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会、2022年9月

やはり児相職員が家庭訪問をしてリスクを把握すべき

繰り返しになるが、ひとり親、母からの「育てられない」という相談、一時保護歴、施設入所歴、家庭復帰後の通告、傷・あざを確認、保育園の長期欠席。そして児童相談所は1年近く、子どもの安全確認をしていないし、母親の話も聞いていない。これだけの材料が揃っていたら、虐待を疑うのは当然であり、少なくとも即家庭訪問の実施を児相職員は判断すべきだ。

前述の通り、私はそうしてきたし、管理職もそう判断した。どれだけ忙しくても、担当者が行けない場合は別部署の人間が訪問し、子どもの安全確認をしてきた。傷・あざがあれば、程度によっては写真を送って判断を仰がずとも現場の判断で子どもを保護したし、管理職もそれを良し、としていた。経験豊富な児相職員は、それが児相の仕事だと自負していたし、親の許可を取る必要がないことも当然分かっているので、親が抵抗しても子どもを保護した。