歯磨き粉をゆすぎすぎるのもよくない

――今まで思っていた常識とは、だいぶかけ離れたテクニックです。

はじめは歯磨き粉の味が口の中に残って気持ちが悪く感じるかもしれませんが、フッ素を口の中に残すのがいいというのが常識になってきています。私も最初は変な感じがしましたが、最近は慣れてきました。

患者さんの中には、どうしても気持ち悪くて、しっかりゆすぎたいとおっしゃる方もいます。そういう方は、もう1回だけ少量の水で軽くゆすいでください。刺激のある歯磨きペーストを使う代わりに、フッ化物配合洗口液でブクブクうがいをするのもよいでしょう。

もちろん、時間をかけて隅々まで磨き、デンタルフロスや歯間ブラシで歯間清掃を行うことは歯周病予防に効果があります。このテクニックは日本では広がりにくいという人もいます。しかし、科学に裏打ちされたテクニックなので、効果的にむし歯を防ぐために取り入れてほしいです。

私は、最初にデンタルフロスで歯間清掃を行った後に歯磨き粉をつけて歯磨きをしています。

写真=iStock.com/Bet_Noire
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日本はフッ素にマイナスイメージを持つ人がまだ多い

――フッ素入りの歯磨き粉を選ぶというのがポイントですね。

歯磨きだけでは予防にはならず、フッ素を使わなければいけないというのにはエビデンスがあり、世界では常識になっています。ただし、日本では1971年に兵庫県宝塚市でフッ素の過剰摂取による斑状歯訴訟(※)が起きました。

※編註:宝塚市の上水道のフッ化物濃度が高かったために、水道水を常飲していた地元住民に斑状歯(フッ素を過剰摂取することによって、歯の表面のエナメル質が白濁すること)の症状が出たことの因果関係を争った裁判。最高裁で住民の請求は棄却された。

この結果、世界的にはむし歯の予防にフッ素が重要だという機運が高まっていたのですが、日本ではフッ素に対するマイナスイメージが根強くなってしまい、啓発が遅れてしまったのです。