幼少期からむし歯の予防計画を立てる

――前編でむし歯や歯周病になってから歯科に通うのではなく、予防のために通わなければいけないというお話がありました。「予防歯科」という言葉も耳にします。

むし歯や歯周病にはさまざまな要因があります。口の中の細菌が多い、唾液量が少ない、歯の質が弱い、生活習慣が不適切……。だから人によってむし歯のなりやすさも違います。ですから、自分の状況を把握し、適切かつ総合的にケアしていくことが大切です。まずは検査をして、予防計画を立てるのが「予防歯科」の役割です。

口の中や歯の状況は日々変わっていきますし、歯磨きの指導をしてもすぐに自己流に戻ってしまう人が多いので、予防歯科には定期的に通う必要があります。できれば子どもの時から通うのが理想です。

スウェーデンでは、赤ちゃんの頃から日本の保健センターのようなところで口腔保健についての基本的な情報提供を行い、3歳から本格的に予防のために歯科医院に通い、むし歯にならないための予防プログラムを歯科医・歯科衛生士と一緒に立てていくのですね。それを定期的にすることによって、歯をケアします。

自費診療でも定期的に歯医者に通うほうがいい

――コーチングのような発想ですね。

その通りです。運動指導と似ていますね。日本人は歯科に「怖いところ」「嫌なところ」というイメージを持ちやすいのですが、そもそもむし歯にならないようにすれば、痛みはありませんし、歯の健康も保てます。そのようにメンタリティーを変えいくべきだと思います。

しかし、日本の医療保険制度は原則として予防には適応されません。「予防歯科」を掲げる歯科医院は増えましたが、自費診療です。つまり、メンタリティーの意味でも、制度の意味でも、日本はとても遅れているのです。

日本では自費診療になってしまいますが、予防歯科を行ったほうが、トータルのコストは安く済みます。痛みも治療回数も減り、健康維持にもつながります。予防や定期健診にコストをかけることの重要性を、ひとりでも多くの人にご理解いただきたいと思います。

取材協力: NPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」(PSAP)西 真紀子

(取材・構成=フリーライター・宮崎智之)
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