チャールズに対するカミラの包容力は遺伝か?

そもそもチャールズとダイアナは基本的に相性が悪かった。

学究肌で芸術と田舎を愛する30歳過ぎのチャールズと、勉強嫌いで都会好き、夢見るティーンネイジャーのままで嫁いできたダイアナでは、すべてが噛み合わない。しかもオーストラリアなどの英連邦諸国に夫妻で外遊に出ても脚光をあびるのは常にダイアナであり、チャールズは地味な扱いでまるで刺身のツマのよう。カミラの方が一緒にいて楽しいし、話も趣味も合うし、自分を立ててくれる。となると、ダイアナよりカミラの方が「やっぱり愛している」となるのだろう。チャールズの幼い頃から決定的に欠けていた自己肯定感は、カミラによって埋められた。「あなたはあなたのままでいい」と思わせ、男性としての自信も持たせてくれる。

写真=AFP/時事通信フォト
ロンドンで開かれた式典に出席するチャールズ英国王(右)とカミラ夫人=2022年9月10日、イギリス・ロンドン

前出の塩田さんは言う。

「出自でいえば、カミラ妃はダイアナ元妃に比べてかなり下流の家柄にはなります。でも、彼女の曽祖母はアリス・ケッペルという、ビクトリア女王の息子エドワード7世のロイヤルミストレス、いわゆる愛妾でした。エドワード7世にはもちろん正妻がいましたが、アリス・ケッペルの方を熱愛したのです。つまり、カミラ妃は遺伝的に国王に愛される資質を持っているのでは、と推測されます。それに前夫のアンドリュー・パーカー・ボウルズは王室を守る軍人でもあったので、臣下として王室との付き合い方も心得ていたと思います」

アリス・ケッペルは、ロイヤルミストレスとして身分をわきまえ、エドワード7世の妃とも“うまく”やっていた。エドワード7世も、ビクトリア女王の在位が長かったため、長すぎる皇太子の期間を送った人だ。アリス・ケッペルもカミラも、偉大な母親を持って萎縮しがちな息子を慰撫し包容できる才能の持ち主だったのだ。

夫の浮気を見て見ぬ振りなどできないダイアナ

一方のダイアナは、カミラに比べれば自己愛が強すぎたし、夫の愛人とうまく付き合うなどという気持ちはなかったに違いない。女王からすれば、チャールズとダイアナには「次期国王夫妻として、どうしてうまくやれないのか? うまくやろうとしないのか?」といういらだちがあっただろう。

とはいえ、子供というものは親の希望通りには生きてくれないものだ。ましてや嫁はなおのこと、姑の思う通りには立ち回ってくれない。親が離婚し不幸な幼少期を送ったダイアナもまた、チャールズと同様にパートナーからの確かな愛が欲しかった。1960年代という、女性の地位が向上した自由な時代に生まれたダイアナは、夫の浮気を見逃すことなどできない。

女王自身も、一時期フィリップ王配の浮気に悩まされたこともあるらしいが、見て見ぬふりをしたようだ。なぜなら女王夫妻に離婚という選択肢はあり得ないから。夫は自分の元に戻ってくると確信していたし、実際に夫妻は70年以上も添い遂げた。しかも、女王の一目惚れで、周囲の反対を押し切って恋愛結婚ができたのだから、息子の不幸な結婚生活を理解できなかったのかもしれない。

「誰も悪くないんです。ダイアナ元妃もチャールズ国王もエリザベス女王も。当時の彼らの未熟さ、若さ、タイミングの悪さ、時代背景など、いろいろなことがあってうまくいかなかったのです」(前出・塩田さん)