断食は胃腸の調子を整えてくれる

最近は「ファスティング」という言葉を聞く機会が増えました。昔からの言い方では「断食」になりますが、これは毎日酷使されている消化管にとってはいい習慣です。

人によっては同じ量を食べるのなら、1日に3回よりも、5回以上に分けたほうが太らなくて、胃腸にも負担にならないという意見もあります。

もちろん、この方法が体に合う人は継続してもいいですが、1回1回の食事の量をコントロールして、これ以上食べないと決めるのは至難のわざです。コントロールできずに食べすぎたら単なる過食となり、胃腸に負担がかかるだけです。

胃腸は、4~5時間以上、食べ物を入れない時間をつくらないと正常に働いてくれないといわれています。消化・吸収の時間を考えても、それは正しいと考えます。

このため1回1回の食事の量を減らして回数を多く食べるよりは、食事の回数を減らし絶食時間を長くしたほうが、消化管の負担にもならず、栄養吸収の面でも効率的です。

もちろん、これは単にエネルギー摂取という意味だけではありません。胃腸に負担をかけず、かつ細胞にあるミトコンドリアをリセットする効果もあり、アンチエイジングにも効果的です。

「規則正しい食事」は胃腸に悪い

胃腸科医の立場からいうと、「食べる時間を決めない」ということも重要です。

学校や会社では集団行動をとるため食事時間が決められたりするのですが、その場合、たとえお腹がすいていなくて、その人にとっては食事を摂るタイミングではないのに、時間が来たために食べなければならなくなります。

これを繰り返していれば、胃腸の調子が悪くなるのは当然です。

規則正しく食べるという習慣は、人間の生活リズム(医学的には概日がいじつリズムといいます)を整える意味でも重要と考えられています。

福島正嗣『朝食にパンを食べるな』(プレジデント社)

しかし、現代のように、消化の負担が大きい糖質に偏った食事を、時間になったからといって消化管が疲れているのに摂る行為は、消化管の生理を無視しています。

このため、胃腸の調子を整えるためには、食事の時間を決めず、お腹がすいたら食べるという習慣が重要です。

しかし、現代人にとっては、「お腹がすいたら食べる」「時間を決めない」ということはとても贅沢な行為になっているのかもしれません。もし、企業に働き方改革を求めるのなら、休みの確保や労働時間の制限だけでなく、好きな時間に休みをとり、食事時間も自由にすることも重要だと思います。

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