モラ夫に“地雷”は存在しない
あるモラ夫は、リビングや台所を点検し、隅に埃があると一瞬嬉しそうな顔した後、妻の不足を指摘した。家事の不足が見つからないときは、冷蔵庫のてっぺんを指でなぞり、「この埃は何かな?」などと質問モラを繰り出す。
ほかにも、料理中の妻を監視し、食材を床にこぼしたのを見つけると飛んできて「何やってんだ!」と怒鳴るモラ夫もいる。スーパーのレシートを点検し、一定額(500円や1000円が多い)を超えた食材について、「これは何だ⁉」と怖い顔で詰問するモラ夫もいる。ある被害妻は、顆粒状の片栗粉(普通の片栗粉の約2倍の価格)を購入したことを執拗にディスられた。
よく、「地雷を踏んでモラ夫を怒らせてしまう」という表現をすることがある。しかし、これはモラ夫の本質を理解した表現ではない。
仮に、表面的には妻が「地雷を踏んで」怒らせたように見えても、実際には「地雷」はどこにもない。あえて地雷を使って比喩的に表現するならば、モラ夫自身が地雷であり、被害妻の言動にかかわらず、勝手に爆発するのである。
「怒る基準」はころころ変わる
また、それぞれのモラ夫に「怒る基準」があり、妻がその基準を守ろうとすると、モラ夫はそれに気づき、基準自体を変えて怒り出す。被害妻の支援者のなかには、これをダブルバインド(相矛盾する2つの基準)と呼ぶ方もいる。しかし、これは正確ではない。そもそも、「怒る基準」はモラ夫にとって重要なことではなく、「怒る基準」を考えてもモラハラは防げない。モラ夫は「怒りたいから怒る」「支配するために怒る」のであって、怒る理由は後付けであり、だからこそそのときどきで「基準」が変わるのである。
そのうちモラ夫は怒る理由を考えることもしなくなる。そして突然怒り出し、「俺が怒っている理由がわかるか⁉」「お前自身のどこがいけないか考えろ!」などと、「怒る理由」の説明自体を被害妻に押し付けてくる。
しかも、これらの質問には「正解」はない。被害妻がどのように答えようと、「わかっていない」「よく考えろ」とさらに怒りが続き、執拗な説教が続く。
何を答えてもダメなので黙っていると、「まじめに考えろ」「正面から答えろ」「俺に逆らうのか」などと言って迫ってくる。多くの事案で、これらの質問は説教モラ地獄への入り口である。
なお、万一、家事に不足があるとしても、それが怒る理由になるわけがない。掃除や料理が不十分であれば、夫の分担を増やせば解決するのではないだろうか。夫婦とは互いに助け合って生活するパートナーであり、妻は家政婦ではない。