オウム真理教や統一教会というカルトになってくると、既存宗教の寺や教会にあたる道場や施設にも信者を住まわせます。こうした施設は修行や祈りの場というだけでなくて、労働や生活の場。親が入信したら、何も知らない幼い子どもまで連れていかれるという世界も現出します。

ここで、カルトに引き込まれて深いマインド・コントロール状態にある人を、いかにして教団施設から引き離し、取り戻すかが大問題となります。その始まりは日本では、やはり統一教会でした。

統一教会は、日本と韓国の間に国交がなかった1958年に宣教師を密入国させ、日本で伝道を始めたといわれています。59年に日本統一教会が創立されると、高校生や大学生などの若者を中心に「原理運動」が活発におこなわれました。統一教会の学生向け布教団体が原理研究会(「CARP」という言い方もします)です。

統一教会は、早稲田大学や東京大学をはじめとする大学を舞台に、「聖書に興味はありませんか」とサークル活動を装って勧誘を繰り返し、学生たちを原理研に引きずり込んだのです。研修は合宿生活を通じておこなわれるため、家に帰らない学生が増大し、62年には原理運動対策父母の会ができました。

これが1967年に新聞に取り上げられて社会問題になったのが「親泣かせの『原理運動』」です。これこそが日本のカルト問題の原点といえるでしょう。

統一教会に破壊された親子の関係

統一教会の大学における勧誘は、今日も続いています。統一教会に入信する学生の多くは、このルートで引きずり込まれた若者たちです。

親が子どもを探して連れ戻そうとすると、組織的に行方不明にしてしまうことも統一教会の常套手段です。

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たとえば大阪で勧誘された学生の親が猛反対していると、統一教会はその子を東日本にある施設に移し、隠してしまいます。統一教会本部に行って問い合わせると、「知らない」などといいます。信者登録カードがあって信者は管理されていますから、知らないはずはありませんが、居場所はわからないとウソをつくのです。

移した先の「ホーム」と呼ばれる施設でも、バレないように偽名を使わせたり、外に出て勧誘する仕事ではなく「食当」という食事当番を担当させたりします。統一教会のホームは、最盛期には全国に1000カ所はあり、現在でも数百カ所以上あるのではないかと推測されますが、住所は公開されていません。なお、公にしている教会は約290あり、こちらはホームページをつくるなどして住所を公開しています。

このような統一教会の家族破壊にあって、子どもが何年も消息不明で悩んでいる親も数多くいます。これは、その子が親のことを何も考えず、親を見捨てて行方不明になったわけではなく、親が地獄に堕ちて苦しまないように、自ら行方不明になっているのです。