「死刑にしろ」という人に足りないもの

「許せない」気持ちはわかる。しかし、人間は学習し、「許す」ことができる。

前野隆司『ディストピア禍の新・幸福論』(プレジデント社)

人間に埋め込まれたもうひとつの本能――「共感」をより重視しながら、仇討ちよりも調和の方向へと、人類は少しずつ進んできたのである。

わたしは後者の可能性を信じたいと思う。

いずれにせよ、立ち戻るべきは「死んだらなにもなくなる」という客観的事実である。報復しようが死刑にしようが、いずれわたしたちはみな、この世から消えてなくなる。

いずれ消えてなくなる命なら、なるべく早く憎しみと報復の連鎖を断ち切ったほうが、続く世代の人間は平和に生きられるのではないか。

本能に駆られて「死刑にしろ」と叫ぶ人は、死についての総合的・包括的な思索が不足していると考えられないだろうか。また、自分の生に対する総合的・包括的な思索も不十分というべきではないだろうか。

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