環境問題において皇室が果たす役割とは

1989年(平成元)8月4日、宮殿石橋の間での即位にあたっての記者会見で、平成の天皇は、在日外国報道協会代表に、「イギリスの王室は、環境、文化の問題について、積極的に発言をされてます。日本は、世界から地球規模の環境問題で積極的な役割を期待されている一方、環境破壊について、責任を問われています。こうした点で皇室の果たしうる役割を含め、いかがお考えでしょうか」と質問された。

即位したばかりの平成の天皇は、こう答えた。

現在環境の問題は、世界のあらゆる人々が関心を持たなければいけないほど相互依存性の強い問題になっていると思います。
皇室としては、ふさわしい在り方で、国民の関心が高まるように努めていきたいと思っております。皇太子時代、毎年豊かな海づくり大会に出席しましたのも、日本をかこむ海が少しでも良くなるように願ってのことでありました。
地球規模の環境が日本でもだんだん関心を集めてき、それに取り組む人々が増えてきていることを、大変うれしく思っております。

私的行為と公的行為が結びついた大会

天皇に即位後も、全国豊かな海づくり大会に臨席し、全国の漁業関係者を励まし続けたのである。こうして平成の天皇が皇太子時代から関わってきた全国豊かな海づくり大会は、重要な公的行為の1つとなった。

天皇や皇族の公的行為は、憲法や法令で規定されてはおらず、憲法に明記された天皇の国事行為には該当しないが、しかし純粋な私的行為ともいえず、かつ公的な意味を持った行為と明記されたものでもなく、政府などの承認を得ながら、広く国民に支持されてきたものと解釈されている。

憲法に明記された国事行為と、公的行為が、いわゆる「ご公務」にあたる。一方、ハゼの研究は私的行為である。全国豊かな海づくり大会は、私的行為であるハゼの研究と、皇太子夫妻の公的行為とが結びついたものともいえた。

つまり、平成の天皇が皇太子時代から築いてきた新しい行事であり、天皇皇后の「ご公務」となったものといえる。

「心を痛めています」の真意

ところで、2007年(平成19)に滋賀県大津市で開かれた第27回全国豊かな海づくり大会で、平成の天皇は式典で驚きの発言をした。

異常繁殖したブルーギルが琵琶湖の在来魚を減らしていたことに対し、天皇は「ブルーギルは50年近く前、私が米国より持ち帰りました」と語り、「心を痛めています」と悔悟の念を明かしたのであった。