引くのは給付の目的となった医療費からだけ

1の(3)と2の(5)の欄に記入するのは、保険会社から支払われる入院や手術などの給付金、健康保険等から給付される出産育児一時金や高額療養費などです。前述のように、控除額を計算する際には、「保険金などで補塡される金額」を差し引きますので、受け取った金額をこれらの欄に記入します。

ただし、明細書の記載要領には「保険金などで補塡される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引き、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引かない」とあります。

つまり、生命保険や医療保険などから入院給付金や手術給付金を受け取った場合、その給付の対象となった入院や手術の費用から引くのみでいいのです。たとえ受け取った給付金のほうが多くて引ききれなかったとしても、通院でかかった医療費や、家族の医療費から差し引く必要はありません。

入院・手術をして30万円を医療機関に支払い、健康保険等から高額療養費20万円、生命保険から20万円の給付金を受け取った場合、差し引くのは30万円の医療費からです。家族の医療費が15万円かかっていたとしても、30万円と15万円を合算した45万円から差し引くのではありません。

この場合、入院や手術の費用は「0円」となりますので、そもそも明細書に記入する必要はなく、家族の歯科治療費15万円だけを記入すればよいのです。もし、医療費合計額45万円から受け取った合計額40万円を引くと5万円となってしまい、10万円を超えないために医療費控除は使えなくなります(所得200万円以上の場合)。

医療費控除額=(30万円-30万円(※))+15万円-10万円=5万円

(※)給付合計額は40万円だが、差し引くのは支払った医療費まで。本人の医療費負担はゼロとなるため、明細書への記載は不要。

分娩費と帝王切開の費用は分けて考える

普通分娩の費用は保険適用外で全額自費ですが、帝王切開に関する費用は保険適用となります。出産費用92万円のうち、保険診療である帝王切開の医療費が20万円、72万円が自費部分だったとします。健康保険から高額療養費が12万円、生命保険から10万円の給付金が支払われた場合、これは帝王切開に対する給付ですから、20万円を限度に差し引きます。そして、72万円から差し引くのは出産育児一時金のみです。

この場合、帝王切開部分の費用は「0円」になりますから、明細書に記入するのは分娩費のみとなります。もし、出産費用合計額92万円から受け取った合計額64万円を引くと28万円となり、10万円を超える部分は18万円。医療費控除額は2万円少なくなってしまいます。

医療費控除額=(20万円-20万円(※1))+(72万円-42万円(※2))-10万円=20万円

(※1)給付合計額は22万円だが、差し引くのは支払った医療費まで。帝王切開に関する医療費支払いはゼロとなるため、明細書への記載は不要。
(※2)給付の目的となった費用から差し引く。
注:保険者が出産育児一時金を病院に直接支払う制度あり