「皇室ジャーナリズム」が育てる“世論”

皇室ジャーナリズムというジャンルがあって、皇室の皆さんの日常やファッションをあれこれ写真や映像に撮っては、皇室事情に詳しい皆さんの意見やコメントをあれこれ合わせて報じる。するとこれが、確実に読まれたり見られたりするから不思議だ。皇室は、トップアイドル並みに一定の「数字」を持つテッパンコンテンツなのである。

これは別に日本に限ったことではなくて、イギリス王室の話題を執拗に追う英国の王室ジャーナリズムなどはもはや歴史も長ければ規模も遥かに大きく、王室の話題やセレブの醜聞専門のタブロイド紙や週刊誌、ファッション誌もあるほどだ。ウィリアム王子とケイト妃の間に3児が次々生まれた数年間は、少なくとも全ロンドンでその話題が挨拶がわりになっていたし、ハリー王子がメーガン妃と王室離脱する「メグジット(メーガン王室離脱)」の一連の狂騒なんて、ブレグジット(英国のEU離脱)や保守党内情のあれこれから国民の気を逸らす目くらましとして大いに利用されていただろう。

「民とは一般に王室や皇室に興味があるもの」なのだろう。だがそれは、マスコミが定期的に燃料となる話題を投下することで、双方向的に作られ大きく育てられた関心でもある。「世間がそれを求めるから」「売れるから」を理由にマスコミは話題を作り煽り、世間はそれに忠実に乗ってああでもないこうでもないと「国民的家族」の行方について口角に泡飛ばして語り、お祭り騒ぎを起こす。王室は、アイドルなのだ。

これと同様のことを、英国タブロイド紙やテレビの手法をお手本にして、日本の週刊誌やテレビが「テッパン」として意識的にやっている。結果、誰もが「自分の知っている“あの家族”」について何かしら知識や意見を持つようになり、誰もが心理的には「皇室の遠い親戚」となるのだ。

写真=iStock/brize99
※写真はイメージです