この項目についても照井氏に解説してもらった。いわく、「IOCが大会を中止しても、東京都とJOCはIOCに対してすべての補償請求権、損害賠償請求権、救済権、および他のすべての要求権を放棄させられる」とする反面、「中止となったことにより発生しかねない第三者からの訴訟などが起きた際は、IOCは免責になるが東京都とJOCはこれらに対し補償の必要がある」ということだ。

簡単に言うと、IOCが大会を中止しても東京都とJOCは一切の文句を言えず、それに加えて、中止に関してIOCに文句を言ってくる第三者との係争も東京都とJOCが担当しろということである。

以上の通り、開催都市契約でがんじがらめになっている日本側が中止を決めることは事実上不可能に近い。

リオ、平昌も…開催地に残る“お荷物”

だが忘れてはならないのは、もし開催したとしても、出来上がっている競技施設を閉会後にどうやって維持するか、という問題だ。

前回の夏季大会を実施したブラジルのリオデジャネイロは、IOCのプランに沿って競技施設を建設したが、メイン会場となったオリンピックパークでは、行政の資金難などの理由で競技施設もろとも廃墟と化している。2018年冬季大会の韓国・平昌(ピョンチャン)でも計885億円をかけて整備した競技場の数々が惨状を呈しており、主要会場の江陵オリンピック公園は閑散。同公園内にある競技会場も使用されず放置されたままだ。

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IOCは「各国から観客が大勢来るから」と、開催都市に対し、しかるべき水準と規模の競技施設の整備を要求したり、観覧席の拡張を求めたりすることが常態化している。30以上ある五輪競技の中には、欧米では人気でも日本では愛好者が少ない競技もあり、不相応な施設整備を押しつけられてはいないだろうか。今後の利用メドが立たないインフラが残ることは、日本にとって「明らかな未来へのお荷物」となる。

「五輪の華」陸上米代表も合宿中止に

昨春、東京五輪の延期が決まる直前、カナダの五輪委は正式に不参加を表明したほか、オーストラリア選手団は参加を拒否する、といった動きが起きていた。両チームはいずれも新型コロナ感染へのリスクを挙げていた。こうしたムーブメントが世界各国で広がり、IOCは1年後の延期を決めたという経緯がある。

開幕までの期間を考えると、感染を抑えるにしても残された時間が少ないなか、日本の感染状況に対する各国の評定は厳しい。