私の考えは間違っていたのかな

そんなときに飛び込んできたのが、「森理世さん ミス・ユニバース2007 優勝」という驚きのニュース。世界的に有名な美を競うコンテストで、日本人がその頂点に立つとはいったいどういうことですか? って、私は大混乱。森理世さんの登場によって、あれ? 私の考えは間違っていたのかなと思い始めたんです。

それから少しずつ、行動が変わっていったと思う。ボストンの教会にゲイの若者向けのコミュニティーがあって、そこに参加するようになって、初めてリアルゲイ友ができたのも、仲良しの日本人の友だちにカミングアウトできたのもこのころでした。

20歳でニューヨークの美大に進学して、そこで独自の価値を持ち、またLGBTQである学生や先生たちが堂々と自分を主張する姿を目の当たりにし、私をずっと苦しめていた“普通”や“常識”が少しずつ塗り替えられていったのです。1日の中で笑顔の時間が増えていきました。メイクアップアーティストのアシスタントになったのもこのころ。

写真提供=西村宏堂
メイクアップアーティストとしての活動もスタート

24歳でようやくカミングアウトできた

でも、人生が上向き始めても、人生グラフは谷底のまま。その理由は、両親にカミングアウトできていなかったから。両親に自分が同性愛者だと告げたら見放されるんじゃないか、二度と家には帰れないんじゃないかと思うと、怖くて仕方がなくて、言う勇気を持てずにいました。

ゲイチャット仲間には、「カミングアウトしたけど宗教上の理由からダメだと言われた」という子がいたし、ボストンの教会で参加した若者向けのゲイミーティングでは、「両親にゲイと伝えたら見捨てられて難民としてアメリカに来た」というメキシコ人の子にも出会いました。

私も同じことになるかもしれない、その恐怖心に打ち勝てたのは、「言わなきゃ変われない」「私は変わりたい」という気持ちが、勝ったから。

僧侶の修行に入る直前の24歳のときにカミングアウトを果たし、まるでピーチサイダーのプールにドボンと飛び込んだかのように、人生がキラキラと輝きだしたのです。

修行先で悪夢の再来が…

僧侶の修行はとにかく厳しくて、入浴のときだけが唯一リラックスできる時間。みんなの心のガードもすっかり外れたお風呂上がり、私がパンツをはこうとしていたら、同じ修行僧で小柄なジャイアンみたいな人が近寄ってきて「てめえ、最初に見たとき、カマかと思ったぜ」って、いきなり大声で話しかけてきたんです。