欧米先進国並みに高くなった日本の同性愛許容度

世界では、同性婚を法的に認める国が増加している(図表4参照)。

たしかに、世界的に人権意識が高まっており、性的少数者であってもその権利を極力尊重しようというのが国際的な潮流になっていることは間違いない。わが国でも、そうした潮流に沿って同性婚を実現しようとする動きが、当事者や社会運動家の間で高まっているといえよう。

しかし、こうした潮流はほんとうに全世界的な動きなのだろうか。それとも一部の国々だけの動きなのだろうか。

こうした点を確かめるため、世界価値観調査における同性愛許容度の平均点の各国分布を2010年期と2017年期で比較した散布図を作成した(図表5参照)。どちらの時期でも調査が行われた42カ国が対象となっている。

図表からはいろいろなことが読み取れる。

まず目立っているのは、各国の同性愛の許容度が、平均点が1から10近くまで、広く分布している点である。42カ国のうち2017年期の許容度最低国はヨルダンであり、平均点は1.3である。許容度最高国はアイスランドであり、平均点は9.0である。同性愛への見方の差は世界の中でこれだけ大きいのである。

儒教道徳の影響力が根強い東洋の国と同性愛許容度の関連

国名をチェックすると、許容度の高い国は欧米先進国に偏っている。特にアイスランドやスウェーデンといった北欧の国の許容度が高い。

欧米先進国の中では米国の許容度が最も低い。これは、上で述べたように、国内にヨーロッパ的な地域と頑固に独自性を保っている地域とが並立しているからである。

他方、許容度の低い国は、すべてが途上国であり、なかでもヨルダン、チュニジア、パキスタンといったイスラム教国の低さが目立っている。欧米先進国以外の人口大国である中国やロシアも平均点が3以下とかなり低い方である。

台湾や韓国は、いまや経済的には先進国に仲間入りしているが、同性愛に対する見方では、平均点が5以下であり、なお低い方と言わざるを得ず、欧米先進国とは一線を画している。やはり、従来の儒教道徳の影響力が根強いのであろう。

台湾ではこうした同性愛への許容度の低さにもかかわらず、2017年5月、最高裁判所が同性カップルに結婚の権利が認められないのは違憲であるとの判断を下し、2年以内の法改正を求め、2018年11月の国民投票をへて、同性婚がアジアではじめて合法化された。

さて、わが国の位置であるが、許容度の水準が欧米先進国並みとなっている点が、実は大きな特徴だといえる。東アジア儒教圏の中で、中国はさておいて、経済発展度では肩を並べるようになった台湾や韓国と比較しても特異に高い許容度だと言えよう。

ただし、日本の許容度は、米国を除く欧米先進国と比較すると一番低い位置に甘んじているともいえる。日本の有識者が日本は遅れていると主張するのは、ここらへんに根拠がある。