「わきまえ」がイノベーションを阻む

【白河】今回はすごい勢いで抗議の署名が集まり、11日間で15万筆以上が集まりました。男性の署名も多かったようです。これからどうしたらいいのか、発言する男性も増えています。

その一方で、この問題については、何か発言すると「それは間違っている」と言われそうでこわいと言っている男性もいる。

森前会長の発言に抗議するオンライン署名は、15万筆以上を集めた(change.orgより)

【笛美】それはわかります。

【白河】じゃあ、せめてそういう(森前会長が女性蔑視発言をしたような)場では「同調しない」という抵抗だけでもしましょうと言いたいですね。周りと一緒になって、笑わなかったらいいんです。

【笛美】確かにそうですね。でもああいう場面で、男性が笑わないでいることができるのかな。「わきまえよ」という圧力が……。

【白河】でも、わきまえる男性が多いから、今、日本は大変なことになっているわけです。

日本の企業ではさかんに「イノベーションを起こそう」と言っていますが、わきまえていたらイノベーションなんて絶対に起きないですよ。

【笛美】本当にそうなんですよね。ホモソーシャルな世界にいる限り、革新的なことなんて起こせるわけがない。突き抜けられない。

【白河】でも、これだけ報道されて話題になれば、もしも「ホモソーシャル」という言葉を知らなかったとしても、「なるほど、これまで自分が抱えていたモヤモヤは、これだったんだ」とわかる。言葉がつくと、男性も女性も言語化できるようになりますよね。

【笛美】今回の一件で、「わきまえる」という言葉が脚光を浴びたのって、よかったと思います。これまで自分は、わきまえさせられていたんだ、そしてそれは自分だけじゃなかったんだ、というのがわかって、ほっとした人って多いと思います。森さんのおかげでいい言葉がついた(笑)。

「女性活躍」「ダイバーシティ」の誤認

【白河】日本がずっと使ってきた「女性活躍」という言葉がありますが、これだと「女性だけ頑張れ」ということになってしまいます。一方、「男女平等」「ジェンダー平等」は、女性だけが頑張るのではなく、周りも変わらないといけません。やっぱり、女性だけが頑張っても、女性管理職は増えないんですよね。

【笛美】それを言っていただけて、すごくうれしいです。

私は「女性活躍」が盛んに言われるようになった頃に20代を過ごしたんですが、そのときの圧ってすごかったんですよ。結婚しなさい、子どもも産みなさい、キャリアアップもしなさい、と。人生でやるべきとされることが積み重なっていくのに、時間はどんどん過ぎていく。それを自分一人で受け止めなきゃいけないというのが、本当に苦痛で……。

「女性だけが頑張り、追い詰められるのではなく、社会全体が変わりましょう」と、全体のモードが変わるといいと思います。

【白河】ところが企業の人事の方とお話しすると、「ダイバーシティ」というとLGBTQの方たちだけの話になっていて、女性についてはもう終わってしまったかのような誤解もあって……。女性も含めてのダイバーシティなんですけど。

【笛美】勝手に終わらせないで~。