ナイキ超厚底の限定品約8万円を23万円で売って稼ぐ

ナイキも転売問題には頭を悩ませている。「必要な人に届けたい」という思いから、近年は購入条件を満たした人に先行販売するなどの工夫も施している。

昨年の東京マラソン翌日(3月4日)には、3Dプリントを活用した「ズーム ヴェイパーフライ エリート フライプリント」を限定販売した。価格は税込8万1000円。その「購入条件」が厳しかった。

過去2年間のフルマラソンで男性は「3時間0分以内」、女性は「同3時間30分以内」のタイムを持ち、発売当日の朝7時半~8時半にナイキ原宿店で応募受付をするというものだ。

月曜日の早朝にもかかわらず、100人以上が応募。タイムの速い順から優先購入権を付与するかたちで、「31足限定」が即日完売した。購入者の名前はほぼ明らかになっているが、限定シューズの1つはメルカリに出品され、23万円で取引された。

最新モデルである「エア ズーム アルファフライ ネクスト%」の初期カラーも今年3月1日に特別先行販売したが、過去2年間のフルマラソンで男性は2時間50分以内、女性は3時間40分以内が購入条件だった(先着順)。

初期カラーも、新カラーも、すでに通常価格で購入するのは非常に難しい。どうしても欲しいなら、ネットオークションやフリマアプリで落札するか、定価よりも2万円ほど近い高値をつけて販売しているショップで購入するしかないのだ。

なぜ、高値でも買うのか? どんな履き心地なのか?

トップ選手から市民ランナーを含めランナーたちの必需品となっている最新のナイキ厚底だが、高いコストを払うに値する価値はあるのだろうか。

筆者は運よくアルファフライをゲットできた。仕事柄、これまで数えきれないほどのシューズを履いてきたが、アルファフライは他のどのシューズとも感触が異なっていた。

着用すると前モデルを越える「超厚底」となるソールの柔らかさを感じるが、走ると安定感があった。前足部にはエア(クッション)が新規に搭載されたため、ゆっくり走るとエアの硬さを感じたものの、スピードを上げて走ると、エアの反発力を使うことができて、さらに「進む」感覚があるのだ。

写真提供=ナイキ
前足部に搭載されたエアの反発力が推進力を生み出す

このシューズで2時間5分29秒の日本記録を樹立した大迫傑もこう話している。

「アルファフライは前モデルと比べて反発力が一段と上がったと感じました。地面をたたいた分、跳ね返って、ロスが少なく、個人的にはとても気に入っています。少しだけ重くなりましたが、その分、反発力も上がったので重さは気になりません。一歩一歩が大股になったというか、きつくなってきたときに少ない力でスピードを上げられます。自分はきつくなってくると、上に跳んでしまう傾向がありますが、アルファフライは上に跳んでしまうのを前に進む推進力に変えてくれる感覚がありますね」

写真提供=ナイキ
大迫傑選手

大迫は東京マラソン出場の2~3週間前から履き始め、当初は「薄底から厚底に変えたときくらい、足を入れた感じが違いました」と言うが、慣れるまで時間はかからなかった。3回ほど履いてシューズに足を慣らして、東京マラソンで快走した。

「ただ接地の感覚は少し変わりましたね。以前は少し外側で接地していましたが、アルファフライはエアが前足部に2つ搭載されています。これまでの走りでは力が逃げてしまう感覚があったので、意識的に靴の中心に体重を乗せることをイメージしました。どんなシューズにも言えることですが、慣れることが重要なので調整しています」