成功者の本でいい運にあやかる
アンケートでは、愛読書についても調査した。とりわけ、運がいい派の人が好む本で目立ったのが上にあるもので、自己啓発本や名著、ベストセラーが並んだ。樺沢さんは、「運がいいという人は、ポジティブで、成長したいという意識が高いのでしょう。勉強熱心で、社会の動きに敏感なこともうかがえますね」と分析する。
ここに挙げられた本のなかで、『人を動かす』や『道は開ける』『完訳 7つの習慣』は、自己啓発本のロングセラーとして世界的にも有名で、「座右の書」としているビジネスパーソンも少なくない。『夢をかなえるゾウ』や『改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん』も自己啓発本でベストセラーになった。
アドラー心理学を解説した『嫌われる勇気』、養老孟司・東大名誉教授の『バカの壁』もベストセラーで、教養書ともいえるが、自己啓発本としての側面もある。『決定版 菜根譚』は、処世訓の古典として名高い中国・明代の随筆集の解説書で、これも自己啓発本の一種といえるだろう。
小説では、とりわけ、ビジネスパーソンに人気が高く、ベストセラーにもなった『下町ロケット』が、運がいい派の人たちに好んで読まれている。
そうしたなかで気になるのが『聖書』だ。運がいい派は信仰心が強い人が多いからかもしれないが、島田さんは「日本では明治以来、西洋文化を学んだ上流・知識階級に、キリスト教が広まったのです。たとえば現在でも、医師や看護師には信者が多い。聖書は成功者の“人生のバイブル”もしれません」と説明する。
パナソニックグループの創業者である松下幸之助氏の随筆集『道をひらく』も愛読書にする人が多かった。同書もビジネスパーソンの愛読書として、必ずといっていいほど名が挙がる。上昇志向が強い人は、同じ立場の人同士が集まるという、前述の「同属性の法則」によって、「自分が目指す成功者の思想に触れたい」と考えるのかもしれない。「実は、そうした運がいい人にあやかるということが、重要なポイントなんです」と樺沢さんはいう。
「ある心理学の研究で、運が悪いという人に、運がいい人の行動パターンを真似てもらったところ、80%の人が運がよくなったと答えました。つまり、運がいい人は、たまたま幸運に恵まれたのではなく、本などを通して勝ちパターンを学び、それを実践して成功を引き寄せるから、結果的に運がいいと思うようになるのです」(樺沢さん)