トランプ大統領は米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)に金利を引き下げるように圧力を加えていますが、2020年以降は金利を引き上げざるをえなくなるでしょう。世界最大の対外債務を抱えるアメリカは、貿易対立などに由来する経済悪化により国債の債務不履行を引き起こす可能性があり、その懸念が高まればアメリカ国債の価値は相対的に下がり、金利が上昇します。金利が上がれば、世界中で経済の停滞が進みます。

――世界的な経済停滞は、具体的にいつ起こるのでしょうか。

経済停滞はどう始まるかというと、誰も見ていない地域で始まります。リーマン・ショックのときを思い出してみてください。2007年から何が起こったかというと、まずアイスランドで銀行が資金繰りの悪化を起こし、経営破綻をしました。前兆があったのです。しかし、誰も注意をしていませんでした。そして、その1年後の2008年にリーマン・ブラザーズが破綻したわけですが、破綻してようやく皆が目覚めたわけです。景気後退は一気に起こるというわけではなく、段階的に物事が悪化していくのです。

そして今、世界を見渡してみてください。景気後退の前兆は、すでに始まっています。アルゼンチン、トルコ、ベネズエラなどで経済危機が起こっています。そう、もうすでに景気後退は始まっているのです。世界のマーケットから見たら規模が小さいので、誰も注意を払っていませんが、すでに始まっているのです。そのうちに誰もが無視できない大きなマーケットで崩壊が起こります。このままいくと、2020年以降の数年以内に状況が悪化するということが見えてくると思います。

――アメリカでは、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などと呼ばれる巨大IT企業が世界の時価総額ランキングの上位を占め、ウォーレン・バフェット氏もアップルやアマゾンの株を購入していることで話題です。投資家として、これらの企業をどのように評価していますか。

確かに成功した企業と言えます。ですが、投資として考えたときには、すでに株価が高すぎて、私は投資しようとは思いません。ヨーロッパやアメリカでも規制のターゲットになっていますし、どれくらい今後も成功が長続きするかはわからないからです。

イギリスは崩壊していく

――ヨーロッパに目を移せば、イギリスではブレグジットの問題が泥沼化しています。イギリスやEUの未来に関しては、どのように考えていますか。

イギリスは私がオックスフォード大学で歴史学を修めた場所で思い入れが強い国ですが、イギリスの将来に対してはとても悲観的です。

※「NYダウ平均株価の推移」の図は2019年12月16日現在