イギリスは1801年から始まったイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドから成る連合王国ですが、この連合王国がなくなる可能性はあると思っています。

イギリスは他国と同様に大きな負債を抱えていますが、外国に輸出できるものはほとんどありません。スコットランド沖に北海油田がありますが、スコットランドが独立すれば北海油田の権益はスコットランドが取っていくでしょう。北アイルランドやウェールズもEUに残りたいと考えているので、独立の機運が高まるでしょう。総選挙で勝利した人物は、選挙後にも苦戦を強いられるでしょう。

イギリスだけでなく、ヨーロッパも不安定になるでしょう。ヨーロッパで行われてきた一連の選挙を見ればわかるとおり、移民排斥とナショナリズムを煽る極右政党が現れており、分断を生むことによって政治家は票を得られることがわかってしまったので、より不安定化が進むでしょう。また、ヨーロッパ各国は国レベルでも市レベルでも大きな負債を抱えています。したがって、ヨーロッパ経済については、ほぼすべてに対して悲観的です。次のベアマーケット(相場の下落が続いている市場)では、もしかしたらヨーロッパに投資をする、いいチャンスかもしれませんが、現時点では買うことはありません。

21世紀は本当に中国の時代か

――中国についても悲観的でしょうか。中国は香港デモ、経済成長の鈍化、高齢化問題などが懸念されています。

私は中国が21世紀の大国になると思っており、悲観はしていません。なぜならば、世界には毎年毎年上がり続ける国はないからです。20世紀に一番成長した大国はアメリカでしたが、そのアメリカでも何度も経済停滞を経験しました。それでもアメリカは20世紀に成功をしました。21世紀の中国も同じなのです。

――インドに対しては、どのように評価していますか。「中国の次はインドだ。インドは中国を抜かす」という声もあります。

インドが中国を超える大国になるという見通しは私にはありません。ただ、世界中を旅してきた冒険投資家として言えば、世界でどこか1つの国に行くということなら、インドに行くべきだと思います。自然、食べ物、音楽、文化などを考えると、インドほどユニークな国はないからです。そのインドにかつて投資をしたことはありますが、今はしていません。なぜならば、インドが何かを達成したという実績があるというわけではないからです。