牧草地にするために意図的に放火

さらに伐採した森を農地や牧草地にするために草木が焼き払われる。灰を肥料に使う焼き畑農業は伝統的に行われてきたし、牧草地にするために意図的に放火する畜産業者も少なくないという。それらが同時多発的に発生する火災の原因になっているのだ。

実は乾期に森林を燃やして、雨期に農業を行う焼き畑農業は、アフリカやアジアの熱帯雨林でも行われていて、やはり森林火災の発生源になっている。たとえば今夏、インドネシアのスマトラ島やカリマンタン島でも大規模な森林火災が起きているが、これも焼き畑が原因だ。毎年のように焼き畑や森林火災による煙が隣国のシンガポールやマレーシアに流れ込んで、深刻な大気汚染を引き起こしている。

私はマレーシア政府でアドバイザーをやっていたからよく知っているのだが、煙害のシーズンになるとマスクは欠かせないし、自動車は昼間からライトをつけて走っている。アマゾンでも森林火災の黒煙が3000キロメートル近く離れた最大都市サンパウロまで届いて、街全体が煙に覆われて真っ暗になるなどの被害が出ている。

ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は「ブラジルのトランプ」とあだ名される極右のリーダーだ。選挙戦中に襲撃されて重傷を負いながら、18年10月のブラジル大統領選で初当選を果たした。

ブラジルの経済発展を訴えて国民から支持されたボルソナロ大統領は、アマゾンを「重要な経済資源」と位置づけて農地開拓やインフラ整備のための森林開発を積極的に容認してきた。伐採や焼き畑によってアマゾンの森林は以前から減少傾向にあったが、ボルソナロ大統領の開発ポリシーによってそれが加速し、人為的な森林火災を助長した――。

こうした見方もあって、「記録的な数の火災を消し止める能力はブラジル政府にはない」と消火作業に消極的だったボルソナロ大統領に国際的な批判が高まってきた。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は「アマゾンの森林火災は国際的危機」という認識を示して、19年8月末にフランスで開催されたG7でもテーマに取り上げた。消火対策支援金としてG7諸国で2200万ドル(約23億円)を拠出することで合意。

しかしボルソナロ大統領はこれを拒絶し、「アマゾンを『助ける』というG7の国々の『同盟』は、我々を植民地か、誰のものでもない土地であるかのように扱う意図を隠している」と批判した。「自慢のノートルダム大聖堂の火災を食い止められなかった国が何を偉そうに言うか。ブラジルの主権を尊重しろ」というわけである。